chemistry

生命誕生の謎を説明する「ペプチド形成」の仕組みが解明される

2019.07.23 Tuesday

Credit: Smithsonian/Peter Sawyer

Point

■ペプチドが原始地球の環境に類似した環境で形成されることが示された

■アミノニトリルは、アミノ酸よりもずっと簡単に、水中で自分自身でペプチド結合を形成できる

■このプロセスは、火山噴火によって放出され、数十億年前の地球に存在したとされる化学物質から成る環境で起きる

https://nazology.kusuguru.co.jp/archives/6273

地球上に存在する生命はどのようにして誕生したのでしょうか?

実のところ、その仕組みはよく分かっていません。化石や地質をいくら調べても、どうやって無機物から有機物が生まれたのか、さっぱり説明できないのです。

中でも最大の謎は、ペプチドと酵素の成り立ちです。ペプチドとは、アミノ酸が鎖状につながった分子のことで、地球上に存在するすべての生命にとって欠かすことのできない基本要素です。

ペプチドから作られたタンパク質の織物は生物学的プロセスの触媒として働きますが、アミノ酸からのペプチド形成の制御には酵素が不可欠です。

ここで、「ペプチドが先か、酵素が先か?」という疑問が浮上します。ペプチドが無ければ酵素は存在せず、酵素がなければペプチドは存在しないのです。

Credit: peptidesciences.com

今回、この謎を解明しようと立ち上がったユニバーシティ・カレッジ・ロンドンの研究チームが、ペプチドが原始地球の環境に類似した環境で形成されることを証明しました。論文は、雑誌「Nature」に掲載されています。

Peptide ligation by chemoselective aminonitrile coupling in water
https://www.nature.com/articles/s41586-019-1371-4

アミノニトリルからペプチドの直接形成に成功

ペプチドの形成と生命の出現に関する従来の研究は、どれもアミノ酸に焦点を当てたものばかりで、アミノ酸の原料となる化学物質である「アミノニトリル」の反応性には目を向けていませんでした。

アミノニトリルがアミノ酸を形成するには強酸性・強アルカリ性などの厳しい環境が必要ですが、アミノ酸がペプチドを形成するにはエネルギーの再チャージが必要です。研究チームは、高エネルギーのアミノニトリルからペプチドが直接作られることを示し、これらのステップをどちらも回避できることを証明しました。

Credit: pixabay

この方法は、アミノニトリルに元々備わっている、原始地球の環境の一部であった他の分子との反応性を利用したものです。研究チームは、水中で硫化水素をアミノニトリルとヘキサシアノ鉄酸塩に結びつけることで、ペプチドを生み出そうとしました。

その結果、アミノニトリルが水中で自分自身でペプチド結合を形成できること、しかもそれがアミノ酸よりもずっと簡単にできることが明らかになりました。それに加えて、このプロセスが火山噴火によって放出され、数十億年前の地球に存在したと考えられる化学物質から成る環境で起きることも示されました。

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