Point
■銀河の形状を再現した3Dマップが作成され、銀河はポテトチップスのようにねじ曲がっていることがわかる
■このモデルは天の川銀河に散らばる2431個のセファイド変光星を使って、正確な距離データを元に星をプロットして作られている
■銀河がこのように反り返っている原因は、過去の衛星銀河との相互作用、星間ガスとの相互作用、暗黒物質との相互作用の可能性がある
私達が普段何気なく食べているポテトチップス。でも、「これが私達の住む超巨大な銀河と同じ形状だよ」と言われたらどう思いますか?
銀河といえば、パンケーキのように中心の膨れた綺麗な円盤型をイメージしますが、ワルシャワ大学の天文学者が作成した天の川銀河の精密な3Dマップによると、それは少し間違ったイメージだったようです。
今回発表された銀河の3Dマップはセファイド変光星に焦点を当てており、それぞれの星との距離が正確にプロットされています。
以前から天文学者の間では、「天の川銀河には歪みがある」ということが示唆されていました。しかし何千もの星を正確に距離測定して銀河の反り返りを再現したマップが作られたのは今回が初となります。
この3Dマップを見ると、私達の住む天の川銀河の円盤は、まるでポテトチップスのように歪んだ形をしています。
この研究は、ポーランドのワルシャワ大学が中心となって進められている天文学プロジェクトOGLEの一環として発表され、8月2日付けにてデジタル版Scienceに掲載されています。
https://science.sciencemag.org/content/365/6452/478
反り返った天の川銀河
天の川銀河の直径は10万光年で、おおよそ2500億個の恒星と少なくとも1000億個の惑星を含んでいます。
天の川銀河が渦巻状であることは50年代から明らかになっており、この渦には星の集まった4本の腕(Arm)があります。
また、銀河は平板なものではなく、歪みがあるということもこれまでの観測で示唆されてきました。
しかし多くの星をいっぺんに調査し、その3次元的な位置関係を網羅した立体地図はこれまでまだ制作されていませんでした。
今回のマップ作製では、天の川銀河に散らばる2431個のセファイドを誤差5%以内の精度で距離測定し、それを3次元的にプロットすることで作成されています。
セファイドは脈動型変光星で、正確に地球との距離を測ることが可能なタイプの恒星です。(セファイドを利用した距離の測定方法については、こちらの記事を参照)
これにより作られた3Dマップでは、銀河がまるでポテトチップスのように反り返って歪んだ形状をしているとわかります。
このように銀河の円盤が歪んだ形状になってしまった原因は、過去に存在した衛星銀河との相互作用や、銀河が含む星間ガスや暗黒物質の影響と考えられています。
また、今回の研究により観測された何千というセファイドの位置は、銀河円盤がどのようにして形成されたか、星が誕生後どのように銀河内を移動していくのかといった、多くの疑問を探求するための手がかりになるだろうと言われています。
これからはポテトチップスを食べるときに、「これが銀河の形か…」と壮大な宇宙へ思いを馳せてみるのもいいかもしれません。