目覚めて繁殖する可能性は低い
今回月面にクラッシュしたクマムシたちは、まさに乾眠状態にありました。
ポーランド・ポズナム大学の動物学者であるルカシュ・カチュマレク氏は「乾眠状態なら月面への衝撃程度ではまったく無傷であると考えられるので、この先何年もの間月面で生き延びるかもしれない」と指摘します。
ただ水を与えなければ乾眠状態からは目覚めないため、大気も水もない月面ではクマムシたちが、起き上がって月を植民し始める可能性はほぼゼロといえそうです。
それでも乾眠は驚異的な能力であり、その状態に入ると体の生物学的なエイジングも完全にストップします。生後1ヶ月で乾眠に入ると、数年後に目覚めてもまだ生後1ヶ月の若さを保っているというわけです。
ある観察では、苔の中で乾眠していたクマムシが120年ぶりに動き出した事例が確認されています。まさに「セルフ冷凍保存」と呼べる驚異的な能力です。さらに低温・凍結状態にある乾眠から復活するプロセスを研究することで、近い将来、人間が安全に冷凍保存から蘇る方法が見つかるかもしれません。
一方でカチュマレク氏は「衝突の影響で乾眠から目覚めた可能性も捨てきれない」と話します。もしクマムシが覚醒状態で月面に解き放たれているなら、真空状態と高い放射線濃度にさらされることで長くは持たないと予想されます。
しかし彼らのポテンシャルなら、自力で水を発見して宇宙最初の月面植民者となることもあるあ…ないか。