Point
■地球からおよそ7億光年先の銀河に、太陽の400億倍の質量に達する超巨大ブラックホールが発見される
■ブラックホールの半径は790天文単位(AU)に及ぶ(太陽から冥王星までが39.5天文単位)
■2つの楕円銀河が衝突することで、ここまで大きなブラックホールが形成された可能性がある
太陽のおよそ400億倍の質量を誇る、超巨大ブラックホールが発見されました。
これは、地球から7億光年離れた「Holmberg 15A」という銀河の中心に位置するブラックホールです。また、この銀河も「Abell 85」と呼ばれる超巨大な銀河団に属しています。
これまでに発見されたブラックホールの中でも最大級であり、まだ明らかではないものの、2つの楕円銀河が衝突してできた可能性もあるようです。
研究の詳細は、7月24日付けで「arXiv」に掲載されています。
https://arxiv.org/abs/1907.10608
「太陽の400億倍?」頭が追いつかない巨大さ
発見者のマックス・プランク研究所チームは、ヨーロッパ南天文台に設置されている「マルチユニット分光探査機(MUSE)」を用いて直接的な観測を行っています。
これまでに見つかっている最大のブラックホールは、「TON 618」という地球から104億光年離れた場所にあるクエーサーに位置するものです。太陽の660億倍の質量を誇るそうですが、この観測は周囲の恒星の質量や移動速度など、間接的な計測に頼っています。
反対に今回の計測は、広視野と高解像度を誇るMUSEによって、質量が太陽の約440億倍に達することが明らかとなりました。この質量・サイズは直接計測したブラックホールの中では最も大きいといいます。
質量が太陽の400億倍にもなると、ブラックホールが持つ「事象の地平面(イベント・ホライズン)」のサイズも極めて巨大になり、太陽系にあるすべての惑星を軽く飲み込んでしまうそうです。
事象の地平面とは、物質が(私たちの知る範囲で)存在できる領域と物質の存在を知ることができない領域との境目のことを指します。ブラックホールは光すら吸い込んでしまうため、ブラックホールの向こう側にある世界を知ることはできません。
この境界面の半径は「シュワルツシルト半径」と呼ばれています。
そして今回発見されたブラックホールのシュワルツシルト半径は、790天文単位(AU)に及ぶそうです。この長さがどれほどのものかパッとしないでしょうが、太陽から冥王星への距離が39.5AUになります。
さらに太陽から放出される太陽風が届く範囲の境界面(ヘリオポーズ)までが123AUです。すると790AUは想像するだけで頭がパンクしそうな距離だということが分かります。
またブラックホールの様子を詳細に分析する中で「2つの楕円銀河が衝突したときに作られるモデルと合致している」ことが判明しています。まだ多くの秘密がありそうですが、今後の研究を心待ちにしておきましょう。