広鼻下目と狭鼻下目では脳の特性は独立して発生
とはいえ、頭蓋骨と脳は同じものではありません。そこで、研究チームは最新のCTスキャン技術を用い、この頭蓋骨にかつて覆われていたであろう脳の3D復元モデルを作成しました。
復元モデルは、次の動画で確認することができます。
その結果、脳が存在すべき場所に、球根状の領域が存在することが分かりました。単にChilecebusが霊長類の一種であることを確認しようとしていただけだった研究チームは、この事実に驚いたといいます。
そこで研究チームは、分析結果を元に、この奥行きを持つ脳の嗅球のサイズと、視神経管と視神経の形状といった特性を解析。嗅球が比較的小さいことから、Chilecebusの嗅覚が弱かったという推測を導き出しました。
では、弱い嗅覚を補うために視覚に優れていたかというと、そういうわけではないことが分かりました。このことから、研究チームは視覚と嗅覚の進化は私たちが考えるほど密接には関連していないのではないかと推測しています。
Chilecebusの体の大きさは現代のマーモセットほどですが、脳にはそれとは対照的な複数のシワも見つかっています。これは、より複雑な認知能力があることを示しています。つまり、脳の発達すら、脳の大きさと常に関連しているとは限らないということです。
研究チームは、Chilecebusとその他の類人猿の比較によって、全般的な脳の特性の多くがモザイク状に変化を遂げ、広鼻下目と狭鼻下目では独立して発生したものと考えられることを記しました。つまり、初期の類人猿における主な脳の分化は、脳の大きさと相対的な一貫した拡大パターンを示さないということです。
手のひらサイズの小さな頭蓋骨の存在が、脳の進化に関する大きなヒントを与えてくれました。