Point
■米ジョージア大学の研究チームが、遺伝子編集を行ったアルビノトカゲを作成
■爬虫類の遺伝子編集は非常に困難で、成功例は世界初
■アルビノの人々が持つ、視覚障害の研究のためのモデル組織として使用できる
カリブの植物相では、アノールトカゲ科と呼ばれる、人間の指ほどの大きさの小型爬虫類が飛び回っています。
種類が豊富なことから、アノールトカゲは爬虫類の発達と進化を調べる上で、重要な科学的モデルとして扱われてきました。それにもかかわらず、このトカゲの多様性の背後にある遺伝学を探るためのツールが存在せず、解明は困難を極めています。
こうした中、米ジョージア大学の研究チームが、遺伝子編集を行ったトカゲを造ることに世界で初めて成功しました。これは、他の生物の発達と進化についての謎の解明に、トカゲを利用するための大きな一歩になるはずです。
研究チームがCRISPRという遺伝子編集技術を使って造ったのは、アルビノのトカゲ。アルビノの人は視覚障害を持つ場合が多いため、これらのトカゲを利用して、アルビノが目の発達に影響する仕組みを理解することができるのではないかと、期待を寄せています。
論文は、雑誌「Cell Reports」に掲載されています。
https://www.cell.com/cell-reports/fulltext/S2211-1247(19)31005-8
難しい爬虫類の遺伝子編集、突破口は孵化前の卵
これまで、ヒトを含む動物の遺伝子編集は行われたことがあります。ですが、爬虫類の遺伝子編集はそう単純ではなく、実施例がこれまでありませんでした。
遺伝子編集を施した哺乳動物をつくる場合、孵化直後の胚が細胞分裂を始める前にCRISPRを注入します。ところが爬虫類の場合、メスの体内に精子が長期間保存されるため、孵化が始まる時期を予測できないという問題があるのです。
この問題を解くため、研究チームは新しいアプローチを開発しました。トカゲの体内でいつ孵化が始まるかを予測する代わりに、孵化前の卵を使うことにしたのです。未だメスの卵巣内にある孵化前の卵にCRISPRが注入されました。