Point
■超高速度星「PG 1610+062」は、天の川銀河外縁のハローに位置し、秒速約540kmで移動する
■超高速度星は、連星が銀河中心にある超大質量ブラックホールに接近することで、弾き飛ばされた片方の恒星だとされる
■しかし、PG 1610+062の放出は、超大質量ブラックホールではなく、まだ発見されていない中間質量ブラックホールが原因の可能性がある
超高速度星「PG 1610+062」の分析が、思わぬ大発見を呼ぶかもしれません。
天の川銀河の外縁部「ハロー」に位置するこの星は、他の超高速度星と同様、銀河中心部にある「超大質量ブラックホール」の影響で弾き出されたと考えられていました。
ところが、フリードリヒ・アレクサンダー大学(独)の研究によると、PG 1610+062の出発点は銀河中心部ではなく、銀河円盤部の「いて・りゅうこつ腕」だったのです。
その結果、PG 1610+062をハローまで飛ばした原因として、まだ発見されていない「中間質量ブラックホール」の存在が示唆されています。
研究の詳細は、8月6日付けで「Astronomy & Astrophysics」に掲載されました。
https://www.aanda.org/articles/aa/abs/2019/08/aa35429-19/aa35429-19.html
超高速度星の原因は「超大質量ブラックホール」にあり
超高速度星とは、毎秒数百kmを超えるハイスピードで宇宙を移動している天体で、その原因は、天の川銀河の中心にある超大質量ブラックホール「いて座A*(エースター)」であると言われています。
1988年には、太陽の約400万倍もの質量を持つ「いて座A*」に1組の連星が接近した場合のシミュレーションが実施されました。すると、連星の片方はブラックホールにより破壊されましたが、もう片方の星は、エネルギーを得て急激に加速され、弾き飛ばされたのです。
そのスピードたるや、銀河系を脱出できるほどであり、超高速度星の中には、月と地球の間を10分以内で通過することができるのだそう。現に、PG 1610+062の速度も秒速540±50kmで飛翔しています。
ところが、PG 1610+062を詳しく調べてみると、予想外の事実が浮かび上がってきたのです。