Point
■自身の抱える健康と経済の問題について、基礎的な数学スキルが欠如しているために効果的な判断を下せない人たちが世の中には大勢存在している
■しかし実は、数学のスキル以外にも自分の数学的な能力に自信を持っていることも重要であることが明らかとなった
■自分の数学的な能力に自信を持てない人たちは、心理学的実験の結果、自身に不利な決断を下す傾向が強まった
みなさんは自分の数学的な能力にどの程度自信を持っているでしょうか?
クレジットカードの回数払いや、年間の保険料と控除額など、私達が自分に有益な判断を下すために数学の知識を必要となる場面は、日常の中に意外とたくさん潜んでいます。
今回、こうした数の理解力と、選択や決断といったものの関係性を心理学的側面から調査した研究が発表されました。
それによると、単純に数学的なスキルが高い、低いだけではなく、自己の能力に対する信頼度も、効果的な判断に重要な意味を持つことが示唆されたのです。
この研究に関する論文は、米オレゴン大学の研究チームより発表され、9月9日付けで科学専門誌の米国科学アカデミー紀要「PANS」に掲載されています。
https://www.pnas.org/content/early/2019/09/05/1903126116
数に対する理解力
心理学の研究者たちが行った、簡単な数学のテストがあります。あなたはこの問題にすんなり回答ができるでしょうか?
『小さな町の人口1,000人のうち、500人が聖歌隊のメンバーです。聖歌隊500人のメンバーのうち、100人が男性です。聖歌隊にいない500人の住民のうち、300人は男性です。無作為に選ばれた男性が聖歌隊のメンバーである確率はどれくらいでしょうか?』
こうした数を扱った問題にすんなりと上手く答えられる人は、それができない人とは異なる決定を下す傾向があるといいます。すんなり回答できた人々は、数字のそれぞれが何を意味していて、どう影響するか明確に理解することができるからです。
この問題の場合、重要なのは男性に絞った数についてのみ質問されているということです。街の人口1000人だとか聖歌隊が500人いるという情報は、この問題では無意味なものとなります。聖歌隊でない男性は街に300人であり、聖歌隊メンバーの男性は100人です。そうなると街に住む男性の合計は400人となり、この中から無作為に選んだ人物が、聖歌隊メンバーである確率は、「100/400」ということになります。
つまり正解は25%です。
こうした順序を立てて、すんなりと回答に行き着けない人の場合、何かの決定において感情に依存した決定を行う場面が多くなり、結果不利な判断をしてしまう傾向も強くなると言います。
これはまでは、こうした問題が単に数学的な能力のみに依存して発生していると考えられてきました。
しかし、最新の研究では、少し違った事実が明らかになっています。