天体観測に必要な電波望遠鏡の大きさは最低どれくらいかを知っていますか? 答えはなんと、わずか50cm。それこそ15,000円程度の費用で、天の川銀河の中心から伸びる複数の腕「スパイラル・アーム」を簡単に観察できちゃうんです。
今回は、IEEEの地質学者デイヴィッド・シュナイダー氏による「DIY電波望遠鏡」の製作秘話をご紹介します。
試行錯誤の末にたどり着いた材料
シュナイダー氏はまず手始めに、衛星テレビアンテナと、コーヒー豆の缶で作ったカンテナ(アマチュア無線やWi-Fiに用いられるアンテナ)を使った望遠鏡を試作しました。
ですが、このシンプルすぎるアプローチは失敗。氏がもっとも求めていた「21cm線」をキャッチするのには、缶のサイズが小さすぎたとのこと。
21cm線とは、中性水素原子のエネルギー状態の変化によって放射されるスペクトル線のことで、その波長が 21.106114cmであることからこの名が付けられています。この電波を用いれば、天の川銀河のスパイラルアームに存在する星間ガス雲の位置や動きを計測することができるんです。
続いてシュナイダー氏は、成功率が高いと言われているホーンアンテナ(ラッパのような形状の無線通信用アンテナ)に着目。電波望遠鏡関連のオンラインソースに掲載された事例を真似て、アルミメッキが施されたフォーム板の絶縁体を購入し、アンテナの材料にすることにしました。
ところがまたしても、表面のアルミメッキが電気を通している証拠はマルチメーターで確認できず…。シュナイダー氏は、アルミが電波に対する望ましい効果を発揮しているかどうかを今一度確かめるため、フォーム板で作った小さな箱の中に携帯電話を入れてみました。
もし電波が完全に遮断されていれば、外から電話を掛けても携帯電話は電波をキャッチしないはずですが、実際に電話を掛けてみると、普通に掛かってしまったようで…。
「多くの人がアルミメッキのフォーム板を使って成功しているというのに…なぜだ?」と納得できないシュナイダー氏。フォーム版をさっさと打ち捨て、今度は幅15センチメートルの防水用アルミテープを1ロール購入しました。
ホーンアンテナの開き口の大きさはテープの幅から決め、4つの面の長さはテープ全体の長さ3メートルを4で割った75cmと決めました。ハサミで切った防水用アルミテープを、同じくアルミ製のHVACテープでつなぎ合わせ、アルミメッキではない通常のフォーム板を四角く切り取ったものを端に取り付けると、小型のホーンアンテナが完成しました。