- 彗星の調査を行っていた研究チームが、その彗星が爆発する瞬間を捉えた
- 彗星は時折自発的に爆発することが知られている。しかし、この爆発の原因は現在わかっていない
- 映像は探査機により30分おきに撮影されていたもので、8時間以上続く現象を収めたもの
とても珍しい彗星の爆発する姿が公開されました。
これはトランジット系外惑星探索衛星(TESS)と呼ばれる太陽系外の惑星を見つけ出す目的で、広く夜空を探索している衛星によって捉えられた映像です。
彗星は時折、突然爆発することが知られています。しかし、いつどこで爆発するか予測することは非常に難しいため、その瞬間が映されるというのは珍しいものです。
今回の映像は、TESSの調査映像の中から彗星を調査していた研究者が運良く発見したものです。非常に粒子の荒い映像ではありますが、捕捉の難しい彗星爆発の一部始終が映されており、これは貴重な資料です。
これは彗星の物理的、熱的性質を理解するために役立つと言います。
この研究論文は、米国メリーランド大学の天文学研究者Tony Farnham氏を筆頭とする研究チームにより、11月22日付けで「The Astrophysical Journal Letters」に掲載されています。
https://iopscience.iop.org/article/10.3847/2041-8213/ab564d
ウィルタネン彗星の爆発
彗星は突然爆発することがあります。これは天文学者の間ではよく知られている事実で、割と頻繁に起きていると言われています。
ただ、いつどこで爆発するかは予測できません。そのため、彗星の爆発についての研究は現在のところあまり進んではいません。
彗星の爆発を観測していたのは、トランジット系外惑星探索衛星(TESS)です。これは未発見の系外惑星を発見する目的で、掃天観測という宇宙の広い範囲の観測を行っていて、30分おきに特定の領域を連続して撮影をしています。
特定の天体を観測するものではないため、このデータには非常に多くの物が映っています。そのためデータを利用する研究者が何に着目するかによって、全く違った発見をすることがあるのです。
今回の研究者たちが調査していたのは、46P / Wirtanen(ウィルタネン彗星)と呼ばれる彗星です。これは70年間で非常に地球に近づく彗星の1つで、2018年の後半に地球にもっとも接近していました。
そしてこのとき、ウィルタネン彗星はTESSの観測領域を通過したのです。
研究者たちは公開されているTESSの映像から、彗星に関するなにか新しい情報が得られるのではないかと期待して観測データを調べることにしました。
ところが驚いたことに、そこに映っていたのはウィルタネン彗星が爆発する姿だったのです。これは観測開始の数日後に発生していました。
ウィルタネン彗星の地球最接近予定日は2018年12月16日でしたが、爆発はそれよりもっと前の9月26日に始まっていました。
爆発は一瞬の出来事の様に見えますが、TESSの撮影は30分おきなので実際は8時間近くかけて起こった現象を捉えています。
最初の一時間で非常に強い閃光が発生しています。第2段階として、そこから8時間近くかけて爆発によるダストの雲が広がり、これが太陽光を反射しています。爆発による輝きは2週間近く掛けて徐々に減光していったといいます。
爆発は非常に長く痕跡を残す出来事で、研究者たちは各段階の様子を非常に詳細に見ることができました。
爆発が何故起きたのかという正確な原因は、現在ところ分っていません。しかし、これには仮説があります。
彗星は太陽に接近することで、表面の氷が溶け始めます。この氷が彗星の亀裂に入り込んで急激に蒸発した場合、彗星の爆発が起きるのです。