- 中性子星のパルサーは灯台のように、2方向へ放射されるX線ビームが回転しているイメージで描写される
- しかし、実際は強力な重力で歪んでいるため、表面の正しい状況はわかっていなかった
- 新たな研究は高精度で中性子星を調査し、表面が単純な2極ではなく複雑な構造であると明らかにした
中性子星のイメージ映像を見たことがある人は、この星が灯台のように2方向へ明るい光を伸ばして回転しているのを見たことがあると思います。
これはパルサーと呼ばれる種類の中性子星です。強力な磁場によるX線を極から放射しながら高速回転しています。
この放射は非常に規則的に繰り返されていて、初めて観測した学者はこれがエイリアンの送る信号だと考えたほどです。極めて短い時間内で規則的に繰り返される信号をパルスと呼びます。そのためこのタイプの星はパルサーと呼ばれるのです。
しかし、これは遠目にパルサーを見た場合のイメージでしかありません。
実際の中性子星は強力な重力を持っており、その周辺の時空は歪んでいます。そのため、星の裏側へ回った光も地球の望遠鏡に飛び込んでくるので、パルサーの表面が実際はどのようになっているかよくわかってはいません。
国際宇宙ステーション(ISS)に搭載されたX線望遠鏡(NICER:ナイサー)は、パルサーであるJ0030 + 0451(略してJ0030)を高精度で観測し、史上初となるパルサー表面のマッピングに成功しました。
その結果は、教科書に描かれた単純な灯台のイメージとは異なり、複数の極を持つような複雑なパルサーの姿だったのです。
この観測による一連の論文は、現在『The Astrophysical Journal Letters』のNICER特集号に掲載されています。
https://iopscience.iop.org/journal/2041-8205/page/Focus_on_NICER_Constraints_on_the_Dense_Matter_Equation_of_State
パルサーが灯台のように光るモデル
中性子星は、十分に質量の大きい恒星が超新星爆発を起こした後に生まれます。
ブラックホールほどではありませんが、非常に高密度で重い天体です。今回観測されたJ0030も直径25キロメートルほどでありながら、その質量は太陽の1.3倍あります。
そして中性子星の一種であるパルサーは、星が非常に高速回転しています。J0030は1秒間に205回も回転します。
灯台のように2方向にX線ビームが発生する原理は、中性子星の強力な磁場にあります。強い磁場は星の表面から粒子を引き剥がして加速させ、星の反対側の極へとぶつけます。
こうして2つの磁極にホットスポットが生まれ、そこがX線で観測したとき、とても明るく輝いて見えるのです。
こうした地球と似たような磁石構造がこれまでのパルサーのモデルでした。しかし、実際パルサーはそれほど単純ではなかったようです。