- ソテツには「サイカシン」と呼ばれる毒素成分が含まれており、一般的に食用には適さない
- しかし、ソテツが奄美大島の飢饉の時代を幾度も救った過去がある
日本国内でもたまに見かけるソテツは、実は危険な植物として知られます。
ソテツには、サイカシンという毒素成分が含まれており、生のまま食べると、体内に内出血を起こし、肝臓にダメージを与え、最悪死に至る恐れもあるのです。およそ2億8000万年前から存在しており、「生きた化石」と称される有名な植物ですが、食用には適していません。
しかし、有毒植物であるソテツには、奄美大島を救った過去があるのです。
奄美大島を救ったソテツの話
東京よりも台湾にほど近い奄美大島は、温暖な気候でソテツが育ちやすい環境にあります。他の島や国では、有毒なソテツに手を出すことはありませんが、奄美の島民たちは、数世紀にわたり、ソテツを食用として扱ってきました。
島民が、ソテツを食用に利用し始めたのは江戸時代(1603-1868)のことです。
当時、奄美大島は、薩摩藩の占領下にありました。よく台風の被害に見舞われ、伝統的な作物を育てるのに苦労したものの、温暖な気候のおかげでサトウキビが育つ国内で数少ない地域の一つだったのです。
薩摩藩は、これに目をつけ、島民たちにサトウキビ栽培を奨励し、それ以外の作物を作ると厳しい罰を科しました。サトウキビを原料にした黒糖を幕府に売ることで、薩摩藩は莫大な富を得ることになります。
しかし、サトウキビが不作に陥ると、島は一挙に飢饉に見舞われ、島民たちは飢えに苦しみました。そこで代わりに食用にされたのがソテツだったのです。島民たちが当時、どのようにしてソテツ毒の安全な抜き方を学んだのかはよく分かりません。おそらく試行錯誤を繰り返し、死人も出たことでしょう。
それでも、ソテツを食べることで、島民たちは飢えを凌いだのです。