ソテツの毒抜きは骨が折れる
今に伝わるソテツの毒抜き法は、かなりの重労働です。
まず、ソテツの硬い皮を剥いて、中にある白い芯を取り出します。それを何度も水にさらし、細かく砕いてさらに水につけ、毒素成分であるサイカシンを水に溶かして、毒抜きをします。
そして、水の底に沈んだでんぷんを集めて団子状にし、天日干しで乾燥させます。これが「「ナリ」と呼ばれる食用でんぷんであり、麺類を作ったり、お米に加えて使われます。最も大事なのは、数週間かけて水にさらすことで、これを怠ると毒が抜けません。
現在、毒抜きの方法を知る島民は減っており、若い世代も島を出て行くので、貴重な知識が後代に受け継がれなくなっています。しかし、ソテツの知識は、奄美が飢餓に襲われるたびに島民たちを救ってきた大切なものです。
江戸時代だけでなく、2度の大戦時には、本土からの食料供給が途絶えたり、不作に陥ったりした際に、やはりソテツが島民の命を救ってくれました。終戦後の食糧難の時代に生きていた島民は、当時を振り返り「ソテツ地獄だった」と語る一方で、「ソテツがなければ、私たちは皆死んでいたでしょう」と続けます。
先祖の知恵は、苦しい時を生き抜く宝となります。ソテツの知識や技術が、今後も若い世代に受け継がれることに期待しましょう。
https://nazology.kusuguru.co.jp/archives/47000