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死んだ星が近くの伴星から物質を奪う「吸血鬼星」を観測

2020.01.27 Monday

Credits: NASA and L. Hustak (STScI)
point
  • 連星系の星同士が近い場合、死んだ星が近くの伴星から物質を奪う「吸血鬼星」になる
  • 探査機ケプラーは系外惑星を探していたが、偶然「吸血鬼星」の急激な発光を連続観測していた
  • 吸血鬼星は矮新星と呼ばれるまれな現象を見せており、その初期段階が詳細に記録されたのは初めてのこと

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吸血鬼星(vampire star)と呼ばれるタイプの天体をご存知でしょうか?

ちょっとオカルトチックな名前ですが、これは死んだ星が、近くの星の物質を奪い取って、再び輝き出す激変型変光星のことを指します。

NASAのケプラー探査機は、星系での恒星と惑星の食によって起きる明るさの変化を検出して、太陽系外の惑星を探す宇宙機ですが、偶然にもこの吸血鬼星を捉えていました。

この激変型変光星は「矮新星」という100回ほどしか観測されたことのない、非常にまれな増光現象を起こしており、ケプラーはその初期段階を30分おきに連続観測していました

矮新星の初期に短時間で起こる変化を、最初から詳細に記録したのは今回が初めてのケースです。この観測データは未だ謎多き「矮新星」の理解に役立つといいます。

この研究論文は、メリーランド州バルチモアの宇宙望遠鏡科学研究所(STScI)のRyan Ridden-Harper氏とオーストラリア国立大学が率いるチームにより発表され、王立天文学協会月報に2019年10月21日付で掲載されています。

Discovery of a new WZ Sagittae-type cataclysmic variable in the Kepler/K2 data
https://doi.org/10.1093/mnras/stz2923

恐怖! 吸血鬼の星!

Credit:pixabay

コズミックホラーな空気を感じる吸血鬼星というネーミングですが、これは正式名称を「激変型変光星」と言います。

激変型変光星とは、数日程度の短期間で極度に明るくなり、その後ゆっくりと減光していく星を指します。これは一度きりの場合もありますが、不規則な周期で繰り返される場合もあります。

なぜそんなことが起きるのでしょう? それは吸血鬼星という別名と関係があります。

激変型変光星は、2つの恒星が一緒になって回る連星系で誕生します。これは太陽が2つある太陽系のようなイメージです。

やがてこの連星系では、片方の星が燃え尽きて死に至ります。

あまりに重い星の場合は、燃え尽きると超新星爆発を起こして中性子星やブラックホールになりますが、太陽と同程度の重さの場合、爆発することはなく外層を失って核だけが予熱で輝く白色矮星に変わります。

白色矮星は地球ほどの大きさで太陽と同程度の質量を持つ非常に高密度の死んだ星です。

しかし、この死んだ星の非常に近い距離に、別の恒星があった場合、それは非常に高密度の強い重力によって伴星の物質を奪って再び輝き出すのです。

死者でありながら他者の命を奪って若さを取り戻し輝く。それはさながら、不死者の王たる吸血鬼を連想させます。

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