- イカの脳をMRI撮影した結果、新たに145個の神経経路が発見された
- その内の6割は、視覚機能や運動システムに関係するものと判明し、イカのカモフラージュ機能に大きな役割を果たしているかもしれない
オーストラリア・クイーンズランド大学により、イカの脳をMRI撮影するという世界初の研究が行われました。
その結果、新発見となる神経経路が多数特定されています。
以前から高い視覚認知力やコミュニケーション能力を持っていることで知られるイカですが、今回の研究によって、イカの高度な知能と身体特性の秘密が明らかになりそうです。
研究の詳細は、1月3日付けで「iScience」に掲載されています。
https://www.cell.com/iscience/fulltext/S2589-0042(19)30562-0
犬に匹敵するほどのニューロン数
研究主任のウェン・スン・チャン教授は「イカを含む頭足類は、複雑な脳構造をしており、5億個を越える神経細胞を持っている」と話します。
これは、一般的な軟体動物のニューロン数2万個やラットの2億個を大きく上回り、犬の5億3000万個に匹敵する数字です。
ニューロン数や組織の複雑さが、そのまま知能の高さに繋がるわけではありませんが、それでもこの数字は驚嘆に値します。
そして今回、研究チームは、アオリイカを用いてMRI撮影し、脳マップを作成しました。
その結果、これまでに確認されていた神経経路280個の99%が確認され、さらに、未発見だった神経経路145個の特定に成功しています。145個のおよそ6割は、視覚機能や運動システムに関わるものでした。
このデータは、イカが使うカモフラージュのメカニズムの理解に繋がります。
イカには、体表面の模様を上半身と下半身で別個に変化させる能力を持つものがいます。これが可能なのは、イカが「自らを上から見た場合と下から見た場合の見え方」を理解しているからでしょう。
そして、そのネットワークを作る鍵として、今回新しく発見された神経経路が関与しているものと思われます。
また、MRI調査の結果、アオリイカの目は、視覚能力だけでなく視神経などの構造も脊椎動物のそれに類似することが判明しました。これは、頭足類と脊椎動物という異なる生物群が、別々の進化線をたどった末に類似する形質を獲得したという「収斂進化」を示しています。
今回発見された神経経路のすべての機能が明らかにされたわけではありませんが、そのどれもがイカの高い知能に寄与しているものと思われます。
遠い先の未来、地球を支配しているのはイカだと主張する専門家もいますが、あながち的外れではないかもしれません。