湿度で発電するフィルム

こうして誕生した「Air-gen」は、下部を電極の上に載せ、上部に小さな電極を取り付けたフィルムとなりました。
フィルムは上側に大気中の水分が吸着すると、それは水素イオンと酸素イオンに電離して、上部に電荷が蓄積されます。これによってフィルムの上下で電位差が生まれ、電気が流れるのです。
さまざまな湿度レベルで実験を行った結果、もっともうまく機能するのは湿度45%の場合でしたが、サハラ砂漠のような乾燥した環境でも、デバイスは問題なく機能します。
実験では17個のAir-genを接続して10Vの電圧を生成することにも成功し、LEDを点灯するのにも十分な電力が生成できることが示されました。これは携帯電話の電源としても十分利用できる可能性を秘めています。
さらに新しい改良では電気の出力は数週間継続させることができ、最終的に2カ月以上の継続発電も可能になるだろうといいます。
単純に大気中の水分で発電するというのは、これまで報告されている発電技術の中でもダントツにクリーンで、安価なエネルギーです。
風力や太陽光も関係ないので、天候に左右されることもなく、環境を選ばず室内でも発電が可能なデバイスです。
しかも、この伝導性タンパク質ナノワイヤは、人工物ではなく微生物株が勝手に生成してくれるのです。
これは非常に実用的な次世代技術であると同時に、素材の供給や開発の問題もあっさりクリアしています。
「これはタンパク質ベースの新しい電子デバイス時代の始まりに過ぎない」とYao氏は語っています。
この技術を応用した商業用のタンパク質電子デバイスは、これからどんどん登場する可能性があるというのです。
フィルムを張っておくだけで、数ヶ月も稼働する電源が登場するとなると、これは携帯機器が薄くなるなという感じがしますね。
楽しみに実用化を待ちましょう。