- 液滴の落下による運動エネルギーを用いた発電デバイスが開発された
- 電界効果トランジスタの構造を利用することで、蓄電して放出することで高効率の発電が可能
- 固体と液体の接触帯電を利用しており、将来的には船体、傘の表面で十分な発電が可能になる
地球温暖化とエネルギー問題に悩む現代では、効率よく持続性のある「次世代の再生可能エネルギー」が求められています。
表面の約70%を水に覆われた地球では、この問題について水を有効活用することが重要です。
今回の研究チームは、以前に水滴が固体にぶつかった際の接触帯電を利用した、液滴ベースの発電機を開発しています。しかし、これは非常に発電効率の低いものでした。
チームはこれを2年掛けて非常に高効率の発電システムへ改良したと報告しています。
水滴の落下や接触で、高電圧が取り出せるとなると、それは傘や雨合羽の表面からも発電ができる便利デバイスが作れるようになるかもしれません。
この研究は香港城市大学 機械工学科のWang Zuankai教授らによってまとめられ、権威ある学術雑誌『Nature』に2月5日付けで掲載されています。
https://www.nature.com/articles/s41586-020-1985-6
水滴を使った発電システム
水滴から電力を生むというシステムは、異なる物質が接触した際の電荷の移動を利用しています。
しかし、これは瞬間的な電力密度が非常に低く、取り出せる電力は僅かなものでした。
そこで研究者は、エネルギーの変換効率の改善を行い、電界効果トランジスター似た構造の設計を行いました。
電界効果トランジスターとは、簡単に言うと電力で回路に流れる電力量を制御する電子回路です。
今回のデバイスでは、アルミニウム電極と電気特性に優れたポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を蒸着させた酸化インビジウムスズ(ITO)電極で構成されています。
専門的な材料名が多いですが、原理は簡単で、PTFE / ITO電極に水滴が接触すると電荷が生成されます。
ただ、ここで生成された電力は僅かなものです。
今回のデバイスは、この時点では回路がどこにもつながっていません。そのため生成された電荷はPTFEの層に蓄積されていきます。
そして、落下した水滴が潰れて広がり、端にあるアルミニウム電極に触れたところで回路が繋がり、蓄積された電荷が一気に放出されるのです。
一見単純な仕掛けですが、これによって従来の方法に比べ、1000倍高い電力を得ることができたのです。
これは落下する水の運動エネルギーを電力へ変換することに成功したものだと、研究者は説明しています。
研究では、15cmの高さから0.1ミリリットルの水滴を落とすことで、140Vを超える電圧を発生させることができ、100個の小さなLEDを点灯させることに成功しています。