- 宇宙は人体に健康に害を与え、電子機器にダメージを与えることもある放射線で満ちている
- 放射線の遮断には、高価で重い材料を使う必要があり、宇宙開発を難しくする原因
- 新たな研究は、安価で軽量な代替品として金属酸化物(錆)の粉末が有効であることを示す
外宇宙から降り注ぐ宇宙線や、太陽が放つ放射線は、人体に有害であり宇宙で生活する場合の大きな障害となっています。
この中でも、電離放射線は効果な電子機器へダメージを与えます。
こうした放射線を防ぐことは宇宙開発に置いて必須の課題です。しかし、現在用いられている放射線の遮断材料は、重く高価なものであるため、開発費の負担となっています。
そのため、宇宙開発のエンジニアたちは、既存の材料よりも軽量で費用対効果の高い放射線遮蔽材料の代替品を模索していました。
新たな研究は、そんな安価で軽量な放射線遮蔽を生成する新技術を考案したと報告しています。その決め手となるのが、金属酸化物(別名:錆)だと言うのです。
この技術は応用の幅が広く、宇宙開発に関するコストを大きく削減させる可能性があります。
この研究論文は、米国ロッキード・マーティン社の技術者Michael DeVanzo氏とノースカロライナ州立大学の准教授Robert B.Hayes氏の共著で、科学雑誌『Radiation Physics and Chemistry』の2020年6月号に掲載されています。
https://doi.org/10.1016/j.radphyschem.2020.108685
有害な宇宙の放射線
電離放射線は、原子や分子にエネルギーを与えてイオンを生成します。これによって電子機器がダメージを受けます。
こうした放射線は、銀河宇宙線や太陽フレア、地球のヴァン・アレン帯(地球磁場の捉えた放射線帯)が発生源で、磁場や大気に守られた地上に影響はありませんが、軌道上では問題となります。
この種の放射線から高価な電子機器を保護するために、宇宙機関や民間企業は金属製の箱を用います。これに最適な素材は、鉛や劣化ウランですが、宇宙開発ではその重量が非常に負担となります。
そのため、重量と遮蔽効果のバランスから、電離放射線の遮蔽材にはアルミニウムが好ましいと考えられています。
しかし、今回の研究では、従来のシールド技術と比較して、同じレベルの放射線遮蔽を維持しつつ、重量を30%以上削減する、または同じ重量で遮蔽効果を30%以上向上させることができると言います。