- 高速カメラを使い2つの液滴が結合する瞬間が撮影された
- 液滴がぶつかりあった場合、表面張力で完全には混ざらないことがわかる
- ぶつかり合う液滴の流体力学は、3Dプリントの分野に進歩をもたらす
2つの水滴がぶつかりあった場合、その内部ではどのような変化が起こるのでしょうか?
完全に液体は混合されるのでしょうか? それとも引っ付きあうだけなのでしょうか?
新たな研究は、特殊な装置を使い、高速カメラで2つの液滴が結合する様子を詳細に撮影し分析しています。
公開されている映像では、液滴の横に別の液滴を落とした際に起きる、液滴内部の振る舞いを見ることができます。
そこでは意外にも、液滴表面張力の効果によって完全には混ざらない様子が映し出されていました。
このような液滴の結合における流体力学は、今後3Dプリントの技術への応用が期待されています。
この研究論文は、英国リーズ大学の研究員Thomas C. Sykes氏を筆頭とした研究チームより発表され、2月24日付で流体力学をテーマにした科学雑誌『PHYSICAL REVIEW FLUIDS』に掲載されています。
https://journals.aps.org/prfluids/abstract/10.1103/PhysRevFluids.5.023602
高速カメラが捉えた液滴の結合
撮影用の実験装置では、秒間2,5000フレームの撮影を可能とする高速カメラが2台使われました。
カメラはガラススライドの下と、側面から同期して一度の液滴結合の様子を捉えています。
実験はガラススライドの上で静止している透明な液滴へ向けて、青く着色された液滴を落とす形で行われています。
このとき、液滴は繋がるものの完全に混ざり合わず、衝突の勢いは表面をジェット(噴流)となって伝わります。
ジェットとは一方向へ向かう強い流れのことを言います。側面映像を見ると、まるで毛布をかぶせたように、青い液滴が表面だけをわずかに流れる様子がわかります。
こうした結合の仕方は、2種類の液滴の表面張力の状態によって異なるといいます。そのため常に同じような流れで1つに結合するわけではありません。
表面を伝わるジェットは、表面張力に応じて、強化したり、抑制することが可能なのだといいます。
これはマランゴニ対流と呼ばれる効果によるものです。これは温度差などで液内の表面張力が不均等になったとき、表面張力の大きい方に向かって引っ張られるような流れが生まれる現象をいいます。
わかりやすい例は洗剤のCMでしょう。よく、洗剤を垂らすとぱっと汚れが外側へ逃げる映像が使われることがあります。あれが、マランゴニ対流です。
この映像は洗剤(界面活性剤)が表面張力を奪うことで、表面張力の大きい外側の液体に向かって強い対流が生まれる様子を表しているものです。
このように、液滴がくっつくという一見単純そうな出来事も、液体の表面張力がどうなっているかによってまるで異なった混ざり方をするのです。