中性子星の謎
中性子星は、恒星の死後の姿の1つです。
太陽質量の8倍までの恒星は、最後は重力不足で核融合が停止し、白色矮星という「予熱で輝く星」になります。
太陽質量の8~10倍となる恒星は、どんどんと中心核の核融合進んで重い核が生まれていきます。そして最終段階では、陽子が電子を捕獲して中性子に変わっていきます。
星の核は電子の持つ縮退圧(収縮に抗う力)によって支えられているため、電子を失った星の核は重力を支えられなくなり急速に収縮していきます。
この収縮は中性子が高密度に固まって、その縮退圧で重力を支えられるレベルに達した段階で停止します。こうして中性子ばかりの超高密度天体「中性子星」が誕生するのです。
他の物質は、このとき中性子のコアにぶつかってスーパーボールのように弾かれて飛んでいきます。この衝撃波が超新星爆発です。
中性子星は直径15キロメートル程度という、日本のそこらの県より小さい大きさでありながら、太陽の1.5倍以上の質量を持つ超高密度天体で、その中身の中性子は、原子核内よりも過密な状態に圧縮されています。
普段のガラガラな電車が原子核なら、中性子星は満員の通勤電車のような状態です。そりゃ重いはずです。
さてそんな中性子で問題となるのが、なんでこの星はそんな重いのに潰れないのか? ということです。
天体が中性子星より重くなった場合、それは潰れてブラックホールになります。中性子星が天体としての形を維持して安定していることには、何か理由があるはずなのです。
その原因となっているのが、中性子星の中で中性子やわずかに残った陽子の間に働いている「強い核力」の存在です。
中性子と陽子をつなげる核力が、なぜ中性子星のとてつもない重力を支えて安定させるのでしょうか?
実はこの強い核力は、量子色力学という特殊な分野で説明されるもので、非常に複雑な振る舞いをします。
その中で代表的なものが、核子同士が10-13メートル程度離れている場合には互いを結びつける引力として働きますが、約10-15メートル以内まで近づくと逆に斥力に変わってしまうという性質です。
この強い核力の反発力(斥力芯と呼ばれる)によって、中性子星は潰れずに成立しています。
この特殊な性質を見極めることが、中性子星を安定させている原因を探る重要な調査になるのです。