- 水星の地表には、大きく陥没した窪みがよく見られる
- 窪みにはかつて揮発性の物質が存在し、加熱により気化することで地表が陥没した可能性も
- 揮発性物質は、液体状に変化することもあり、生命の誕生に必要なものでもある
近年、専門家たちは生命のヒントを求め、遠い太陽系外惑星を探すようになっています。
しかし新たな研究で、地球外生命体は予想よりずっと身近な場所にいる可能性が示唆されました。
その場所は太陽に最も近い惑星の「水星」です。
研究によると、水星の地表下にはかつて、生命の誕生に必要な化合物が存在した可能性が高いとのこと。
論文の詳細は、3月16日付けで「Scientific Reports」に掲載されました。
https://www.nature.com/articles/s41598-020-59885-5
地球外生命体は「水星」に⁈
水星の地表面は、太陽系惑星の中でもかなり混沌としたもので、無数のクレーターや急峻な岩山、地面の亀裂が見られます。
この荒れた地形の原因は、従来の研究では、水星の誕生初期に大きな小惑星が衝突したことだとされていました。
しかし、NASAの水星探査機・メッセンジャーにより、2011〜2015年にかけて収集されたデータから新たな仮説が浮上しています。
つまり、水星の地表下にはかつて、「揮発性の化合物」が大量に存在したという説です。
データは確かに、水星初期の小惑星衝突を示唆しましたが、地形は、その後も数十億年にわたり変化し続けていることが判明しました。地表の変化は、小惑星だけが原因ではないということです。
中でも特に多く見られたのが、水星の内部に向かって崩れ落ちたかのような大きな窪みでした。まるで、屋根を支えていた柱が急に抜け落ちたかのような形を示していました。
この現象を説明するものとして、揮発性物質の存在が挙げられます。
揮発性とは、気体になりやすい液体の性質のことで、そこには水も含まれます。
水星の地表下に固体状で存在していた揮発性物質が、マグマや太陽光により加熱されることでガス状に気化。それらが、地中から急速に逃げ出したことで、地表が陥没したと考えれば、すべて辻褄が合います。
また、水星の誕生初期には、地表面が太陽光によく晒されていたと思われるため、気化のプロセスが促進されたことも納得できます。
一方で、揮発性物質の出所はいまだ謎です。
一部では、小惑星の衝突時に持ち込まれたとする説もありますが、いずれにせよ、揮発性物質(特に液体状)は、生命の誕生に寄与することは間違いありません。
他にも、水星の北極地点には氷化した水が発見されており、生命の誕生に必要な物質がかつて存在したことを裏付けます。
水星の表面温度は、平均180〜430度と生命が生きるにはあまりにも過酷です。しかし、地下は比較的穏やかな温度が保たれているとされており、その存在はまったく否定できない状態です。
実は「灯台下暗し」で、地球外生命体は太陽系の外ではなく水星にいるのかもしれませんね。
reference: smithsonianmag / written by くらのすけ