- 月面基地に使うコンクリートの原材料として「おしっこ」が有効
- おしっこに含まれる尿素が、コンクリートを整形する際の可塑剤として機能する
- 現地の宇宙飛行士から無料採取できるので、費用の削減にもなる
まだ見ぬ深宇宙まで人類が足を踏み入れるには、月面基地の建設が必須です。
月面基地は、燃料の補給や飛行船の修理、宇宙飛行士の休息といった中継地点として機能します。
そこで建設のための材料が必要になるわけですが、地球から運ぶには経費や手間がかかりすぎます。一番望ましいのは、現地で直接材料を入手することでしょう。
科学者たちは現在、その材料として「おしっこ」の利用を考えています。
今回、ノルウェー、スペイン、イタリア、オランダの研究チームが参加した実験で、おしっこに含まれる尿素を材料にしたコンクリートの生成に見事成功しました。
研究の詳細は、2月20日付けで「Journal of Cleaner Production」に掲載されています。
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0959652619340478?via%3Dihub
「尿素」がコンクリート生成の可塑剤に
おしっこに含まれる尿素は、ディーゼルエンジンや凍結防止剤にも活用される優れた物質として知られています。
実験では、尿素が、3Dプリンターで混合物を整形する際に必要な可塑剤として機能するかどうかを調べました。
当然ながら、コンクリートを生成するには、尿素以外の材料が必要になります。そこで研究チームは、月面で入手できる「レゴリス」と「水」を原材料として使用しました。
レゴリスは、月表面を覆う堆積層で簡単に手に入り、水は月面の複数箇所で見つかっている氷から溶かし出します。
今回は地球での生成実験のため、レゴリスに関しては、ESA(欧州宇宙機関)が開発した類似化合物で代用しました。
実験の結果、尿素は、レゴリス様物質と水の混合物表面を柔らかくし、形を変形しやすくさせることが実証されました。
耐久力テストでも通常のコンクリートとほぼ同じ重量を支え、安定した形状を維持しています。
また、耐久面で問題となっていた月面上の激しい気温差(日中で120度、夜間でマイナス170度)のある環境ももクリアしたとのことです。
特に一番の利点は、尿素が無料で手に入ることでしょう。
現在、地球から宇宙に物資を運ぶには、たった1キロにつき100万円かかると言われています。
しかし尿素は、現地にいる宇宙飛行士からタダで採取することが可能です。そのため、おしっこは経済面でも宇宙開発の大きな救済となります。
その一方で、いくつかの解決すべき点があるのも事実です。
研究チームのRamón Pamies氏(スペイン・カルタヘナ大学)は、「月面上は地球よりも放射線が強く、隕石のつぶてが頻繁に降り注ぎます。この過酷な環境にも耐えうるコンクリートを作るには、尿素以外の工夫が必要になる」と述べています。
こうした難点をクリアできた暁には、おしっこが月面基地の主要材料として活躍する日もそう遠くないでしょう。