- 地球で見つかる火星の2つの隕石を分析したところ、異なる2つの水源の存在が明らかになった
- 分析の結果では火星のマントルは、地球のように1つに混合されていないこともわかった
- 火星は水分量の異なる、2つの惑星がぶつかってうまく混ざらずに形成された可能性がある
地球では、数多くの火星からやってきた隕石が見つかっています。
この火星の隕石からは、火星の歴史について知ることができます。
新たな研究は、シャーゴッタイトと呼ばれる火星隕石グループを分析したところ、火星の水には少なくとも全く異なる2つの起源が存在することを明らかにしました。
火星は水分含有量が大きく異る2つの惑星が衝突して、完全には混ざり合わずに誕生した可能性があるのです。
このことは、火星の太古の様子を理解するために重要な事実です。
この研究は、NASAのジョンソン宇宙センターの研究者Jessica J. Barnes氏を筆頭とした国際研究チームより発表され、地球科学などを取り扱う査読付き学術雑誌『Nature Geoscience』に3月30日付けで掲載されています。
https://www.nature.com/articles/s41561-020-0552-y
2つの隕石
火星の歴史を知るために、研究者たちは2つの隕石を比較調査しました。
1つはアランヒルズ(ALH)84001と呼ばれる、有名な火星隕石です。
これは1984年に南極で発見された1.9kgほどの隕石で、45億年前に火星の溶岩から生成されたもので火星とほぼ同年代です。
これは1600万年ほど前に火星に落下した小惑星の衝撃で吹き飛ばされ、紀元前11,000年頃、南極大陸に落下したと推定されています。
もう1つはブラックビューティーの別名を持つ「ノースウエストアフリカ(NWA)7034」という火星隕石です。
こちらは2011年にサハラ砂漠で発見された重さは320gの隕石で、約21億年前に急冷された溶岩から形成されたと推定されています。
この隕石は、これまで発見されている火星隕石とは組成が異なっており、古代の火星表面の様子を伝えています。
これは新しい火星隕石のカテゴリーを作るきっかけにもなった隕石です。
今回の研究チームは「二次イオン質量分析法」というものを用いて、隕石中に含まれる水素同位体の比率(D/H比)について調査しました。
D/Hとは重水素と軽水素の比率を示しています。
上の2つの隕石は、どちらも火星の地殻が由来だと判明しています。特にブラックビューティーは、吹き飛ばされた様々な地点の岩石が集まったもので、火星の歴史上の様々な地表の情報を含んでいます。
チームはこの隕石の分析結果と、最近NASAの火星探査機キュリオシティが収集したデータを比較しましたが、火星の40億年近い歴史において、地殻の水素同位体比はほとんど変化がありませんでした。
長い時間が経過しても、地殻が変化しないというのはちょっと奇妙なことです。