ぶつかったのは地球より巨大な「氷塊」だった?
まずもって、天王星が位置するような太陽から遠く離れた場所では、月を生み出したとされる地球のジャイアント・インパクト説とは異なる結果をもたらします。
月は、原始地球と火星サイズの「テイア」と呼ばれる天体との衝突で生まれました。
どちらも氷ではなく、岩石を主成分としており、衝突によって吹き飛ばされたデブリは、岩石ゆえに素早く固まり、新たに岩石衛星の月を生み出しました。
生まれたばかりの月は、重力により周囲のデブリを取り込み、現在の大きさまで成長したのです。
一方で、原始状態の天王星にぶつかった天体は、巨大な氷塊だったと考えられます。
衝突で四散したデブリは岩石ではなく、水やアンモニアを含む揮発性の高いものであり、長期にわたってガス状のまま留まりました。
すると、成長を続ける天王星が、周囲のデブリからガス部分だけを取り込みます。それにより、四散したデブリからガスがなくなり、現在ある衛星の材料が残ったというわけです。
この原理に、自転軸の傾きや現在の衛星の総質量などを考慮に入れると、衝突した氷塊は、地球の1〜3倍の質量におよぶと推定されます。
このサイズの氷塊が衝突すれば、現在の衛星や環の存在だけでなく、自転の速さも説明がつきます。天王星の自転速度は、1周わずか17時間であり、サイズの小さい地球よりもかなり速いです。
研究チームは、「今回のモデルは、天王星が持つ衛星の形成メカニズムを説明する初めてのものであり、海王星のような他の氷惑星についても同様のモデルが当てはまるかもしれない」と述べています。