雨上がりの土の匂いは4億年続く微生物の生存戦略だった
雨上がりの土の匂いは4億年続く微生物の生存戦略だった / 人間の雨上がりの土の匂いを感じる能力は、サメが血を嗅ぎ取る嗅覚より敏感/Credit:depositphotos
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雨上がりの土の匂いは4億年続く微生物の生存戦略だった

2020.04.08 Wednesday

point
  • 雨上がりの土の匂いは抗生物質の元祖となる細菌が発していた
  • 人間が土の匂いを嗅ぎ取る力はサメが血を嗅ぎ取る力より強い
  • 細菌は匂いを発することでワザと自分の胞子を虫に食べさせていた

夏の夕暮れ時に小雨が降ると、土の香りが風に流れる…。

誰もが経験のあるこのノスタルジックな土の香りは、土の中にいる細菌が作る化合物「ゲオスミン」によるものだということが、古くから知られています。

また、小雨のときに最も匂いが強く感じられるのは、遅い雨粒のほうが、土の内部の微小な空間を強く刺激して、より土の中のゲオスミンの放出を促すからです。

夏の日の思い出は、科学の裏付けがあったんですね。

しかし、土の香りが多くの人間にとって忘れがたい理由は「夏の思い出」のせいだけではありません。

人間のゲオスミンに対する嗅覚は、サメが血液を感知する嗅覚よりも鋭いのです。

ただし、なぜ人間の嗅覚がゲオスミンに対して過剰に敏感なのかはまだわかりません。雨を素早く感知するために嗅覚が発達した可能性もありますが、確かな証拠はありませんでした。

ですが今回、スウェーデンの研究者によって、ゲオスミンが人間以外の動物にとっても好ましい香りであることがわかりました。

土の中に住むトビムシの仲間は、ゲオスミンの香りが好きで、ゲオスミンを出す細菌も大好物の食べ物だったのです。

しかし、なぜ細菌はワザワザ捕食者を呼び寄せるような香りを、自分から発しているのでしょうか?

研究内容はスウェーデン農業科学大学のポール・G・ベッチャー氏らによってまとめられ、4月6日に権威ある学術雑誌「nature / microbiology」に掲載されました。

Developmentally regulated volatiles geosmin and 2-methylisoborneol attract a soil arthropod to Streptomyces bacteria promoting spore dispersal
https://www.nature.com/articles/s41564-020-0697-x

匂いの正体は抗生物質の元祖菌

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Credit:depositphotos

土の香りとして知られているゲオスミンを生産している細菌は、ストレプトミセスと呼ばれる放射菌の一種であることが知られています。

放射菌と人間の関係はとても強く、現在知られている天然の抗生物質のうちの三分の二は、放射菌に由来しています。

ちなみに、結核に対して特効薬として知られていたストレプトマイシンも、この細菌の名前(ストレプトミセス)からとられたものです。

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