月にはうさぎが住んでいて、お餅をついていると言われています。
これは月に浮かんだ模様が、昔の中国や日本の人にはその様に見えたからですが、この月に浮かぶ模様は何が原因か知っているでしょうか。
高低差で暗かったり明るかったりする、と考える人が多いかもしれませんが、それだけが原因ではありません。
月の暗く見える部分は黒い玄武岩、白く見える部分は白い斜長岩という岩石が多く存在しています。
このように、月面は地域ごとに様々な地質に覆われているのです。
月の地質については、アポロ計画の時代から調査され、地域ごとの地質図が作られていましたが、統一された地図が作られたことはありません。そのため、新旧のデータでは矛盾している部分もあって問題となっていました。
そこで、アメリカ地質調査所(USGS)の研究者が筆頭となり、数十年に渡る新旧データを統合した初めての月面全体の統一地質地図が作成されたのです。
月面の地質
月に多様な地質が存在するのは、大気による侵食がないこと、またプレートテクトニクスなどの大規模な地殻の変動も無い上に、解けた岩石が冷えるのも早いことが原因です。
月の海と呼ばれる盆地は主に玄武岩に覆われていますが、これはかつて月のマグマが吹き出して覆ったためだと考えられています。
月面のほとんどの地域は未調査の状態ですが、アポロ時代に6つの地域が調査されており、最新の調査では月周回衛星が集めた月面全体の情報があります。
これら新旧のデータでは、月の岩石層の名前や、年代の分類に矛盾があり、研究者には困った問題となっていました。今回作成された地質図では、こうした点も統一的に説明されていて、数十年に渡るプロジェクトの集大成になっています。
公開されている統一地質図は、驚くほど詳細です。
これはNASAの月周回衛星「LOLA」から得られた地形データと、アポロ時代の6つの地域地質図、そして最新の衛星ミッションで得られたデータに基づいています。
月の特定の場所の調査情報を、未調査の残りの部分と結びつけることで月面研究に不可欠な情報を提供しています。
この地図の月赤道域の標高データには、日本の宇宙航空研究開発機構(JAXA)の月周回衛星「かぐや」が行った最近の地形情報が利用されています。
北極、南極の地形は、NASAの月周回衛星LOLAによるものです。
この地図は、今後の月面ミッションにおいても、重要な役割を担うことになるでしょう。
この研究は、アメリカ地質調査所(USGS)のCorey M. Fortezzo氏を筆頭とした研究チームにより、アメリカテキサス州で開催されたLunar and Planetary Instituteの第51回月惑星研究会議で発表されています。
論文はUSGSのサイト上でオンライン公開されています。
https://www.hou.usra.edu/meetings/lpsc2020/pdf/2760.pdf