- 200兆eVの高エネルギーニュートリノが観測されているが、発生源はこれまで不明だった
- ロシアの研究者は、電波望遠鏡の観測記録と比較しこれがクエーサーの電波フレアと特定
- これまではガンマ線と共に発生していると考えられていたが、その常識は塗り替えられた
ニュートリノは幽霊のようにとらえどころのない素粒子で、ほとんど物質と相互作用しません。
このため、高エネルギーニュートリノの観測では、それがどこからやってくるのか? ということが研究テーマの1つになっています。
中でも200兆eV(電子ボルト)以上の、超高エネルギーニュートリノの起源については謎に包まれていて、ガンマ線バーストやブレイザーが発生源と目されていますが、その全貌は明らかになってはいません。
しかし、ロシアのモスクワ物理工科大学の博士課程学生である若手研究者Alexander Plavin氏は、これがクエーサーの電波フレアから来ているという研究を発表しました。
彼はまだ科学者キャリアのほんの入口の段階で、天文学の大きな成果を上げたようです。
高エネルギーニュートリノの検出
ニュートリノは太陽や超新星爆発の残骸から発生していて、地球へ届きます。
今この瞬間も、何兆個ものニュートリノが私たちの身体を突き抜けています。
日本にあるスーパーカミオカンデは、こうしたGeV(ギガ電子ボルト)領域までのニュートリノを検出しています。
しかし、これよりもっと高エネルギーのニュートリノを観測する施設が南極に存在しています。
それがアイスキューブ・ニュートリノ観測所です。この施設は南極の氷の中に5000個以上のセンサーを取り付けて、TeV(テラ電子ボルト)領域の高エネルギーで飛来するニュートリノの検出を行っています。
この施設は基本的北半球の空からやってくるニュートリノを検出しています。
ニュートリノは物質とほとんど相互作用しないため、惑星でもなんでもお構いなしに通り抜けてきます。
そのため、北半球の空からやってくるニュートリノは地球越しに南極で観測する方が、他の粒子と紛れず見つけやすくなるのです。
高エネルギーニュートリノは毎年僅かな数ですが地球にやってきます。これは太陽などが発生源のニュートリノとはまったく異なる発生源だと考えられています。
これまでの観測で、可能性が高いと目されていたのは、ちょうどニュートリノがやってくる方向に発見されていたブレイザーでした。
ブレイザーは、地球方向を向いたクエーサーのことです。これは宇宙で最も明るい天体であり、ときおり高エネルギーのガンマ線を放つ非常に激しい天体現象を起こしています。
分析したところフェルミ・ガンマ線宇宙望遠鏡の観測とニュートリノの検出が一致したため、これが原因ではないかと考えられていたのです。
また、これ以外にもガンマ線バーストなどの現象が発生源になるだろうと予想されていました。