- イスラエルのテル・アラドにある神殿の祭壇を分析したところ、大麻の成分が発見された
- 現代でもアロマテラピーで利用される香料の成分も確認
- 古代ユダ王国のカルト教団は心地よい香料とともに大麻を焚いて宗教儀式を行っていた
現在のイスラエル、テル・アラドの遺跡から発見された古い神殿あとから、大麻の成分が発見されました。
神殿の入り口に設置されていた祭壇上部に残る煤(すす)の跡から検出されたため、当時祭壇で焚かれていた香には大麻の成分が含まれていたことを示唆しています。
近東で古代の遺跡から大麻が見つかったのは、これが初めてです。
古代のカルト教団は、大麻と香料を合わせて恍惚感に浸る宗教儀式を行っていたようです。
テル・アラドの神殿
テル・アラドの遺跡は巨大な城塞で、城壁に囲まれた内部に神殿を持つのが特徴です。
この砦は、紀元前9世紀から6世紀諸島にかけて、聖書に記載されたユダ王国の南の国境を守っていたと考えられています。
神殿のお堂と呼ぶべき場所は保存状態がよく、入口には2つの石灰岩で作られた祭壇が発見されました。
この祭壇は小さい方が高さ40cm、上部の台は20×20cmで、大きい方は高さ約50cm、上部の台は30×30cmです。
神殿の祭祀で重要な役割を果たしたと考えられるこの祭壇の上部表面には、黒い焼け焦げた跡が見つかりました。
この煤のような跡が何なのか、これまで特定できずにいましたが、最新の技術によりその成分分析に成功しました。
それによると、小さな祭壇の跡には大麻の成分が含まれていて、動物の糞と混ぜることで加熱を促進していたことがわかりました。
そして、大きな祭壇に残された跡はフランキンセンスであると明らかになったのです。
フランキンセンスというのは聖書にも登場する精油のことで、現代でもアロマセラピーの香料として使われています。
これらの調査結果は、聖書に登場するユダ王国のカルト教団は儀式の一環として、恍惚感を得るために大麻を用いていたと示唆するものです。
これは古代近東で、大麻が確認された初めての事例です。
またフランキンセンスはアラビアが原産のものです。
この地にアラビア原産のものを運んだのはアッシリア帝国ですが、この遺跡はそれ以前の時代に、ユダ王国が南アラビアと貿易を行っていたことを示しています。
フランキンセンスは、その心地よい香りのために、神殿で焚かれていたのでしょう。
心地よい香を焚きながら、大麻も焚いて恍惚に浸っていたとは、さすが古代のカルト教団です。でも、なんとなくイメージ通りという気もしてしまいます。
この研究は、イスラエル博物館の研究者Eran Arie氏を筆頭著者に発表され、論文は近東文明の歴史と文化を扱う査読付き国際ジャーナル『TEL AVIV』に掲載されました。
https://doi.org/10.1080/03344355.2020.1732046