- 知的オブジェクト「Gömböc(ゴムボック)」はどんな体勢からでもひとりでに起き上がる
- ゴムボックは2点の平衡点しか持たない物体であり、2006年に発見された
- 少数の亀はゴムボックと同じ性質をもっており、自分の力を使わず起き上がることができる
上の写真はアルミ素材だけで作られた「Gömböc(ゴムボック)」と呼ばれる物体です。
一見どこにでもありそうなオブジェクトですが、実はこれ1つで数万円もする代物。
なぜなら、ゴムボックは最小数の平衡点を持つ特殊な物体であり、1000分の1の形状誤差が生じるだけで成り立たなくなる超精密構造体だからです。
ゴムボックはその性質上、どんな姿勢からもひとりでに起き上がることができます。
平衡点とは
ゴムボックの特殊性を理解するためには、物体の「平衡点」を知っておかねばなりません。
例えば、サイコロについて考えてみましょう。サイコロに力を加えて転がすと、サイコロはいずれある面で静止します。
このように、力を加えた物体はいずれ動きがなくなり静止するものです。
そしてこの時、その物体はバランスを保っており、時間変化の影響を受けません。この静止できるポイントを「平衡点」と呼ぶのです。
卵も鉛筆もサイコロもどこかのポイントで静止しますよね。
「平衡点がない」=「転がり続ける&ずっと静止しない」わけですから、物体には必ず平衡点があることになります。
さて、物体には平衡点が複数存在します。
例えばサイコロは6面体なので、少なくとも6つの異なったポイントで静止できますね。これは平衡点が6つ以上あることを示しています。
ここであえて「6つ以上」と述べているのはどうしてでしょうか?実は、サイコロには面以外にも多くの平衡点があるのです。
平衡点には「安定平衡点」と「不安定平衡点」がありますが、この違いを知るなら物体の平衡点を更に見出すことができるでしょう。
安定平衡点
安定平衡点とは、外部の影響を受けても安定している平衡点のことです。私たちが日常で見かける物体のほとんどは「安定平衡点」で静止しています。
例えば、サイコロの6面は安定平衡点です。
また、卵も力を加えてもグラグラと揺れたあとは、基本的に同じようなポイント(卵の腹の部分)で静止しますよね。卵の腹も安定平衡点だと言えます。
不安定平衡点
不安定平衡点とは、静止しているものの絶妙なバランスで成り立っており、外部からのちょっとした影響で元には戻らなくなるものを言います。
例えば、尖った鉛筆の先は不安定平衡点です。非常に難しいですが、鉛筆は先端だけで静止させることができます。実際にできる人はほとんどいないでしょうが、理論的には可能です。
ちなみに、「サイコロに平衡点が6つ以上ある」と述べた理由もこれです。サイコロには「サイコロの角」という複数の不安定平衡点が存在するのですね。
仮にそれらのポイントで静止させることができたとしても、ちょっとした風、テーブルの振動などで崩れてしまい、自然に元に戻ることはありません。この「静止するけど不安定」な平衡点が、不安定平衡点なのです。
ちなみに、不安定平衡点から崩れたとしても、物体は自然とどこかのポイントで静止します。この自然に行き着くポイントが「安定平衡点」です。