- 炭素の起源については、現在重い星の超新星爆発と、軽い星の恒星風という2つの説がある
- 新たな研究は、散開星団に含まれる白色矮星の質量測定から、炭素は軽い星が起源とした
- 炭素は太陽の1.65倍以上の質量の星で生成され、恒星風によってゆっくりと宇宙にまかれていく
私たち生命を作り出すために欠かせない元素「炭素」は一体どの様に宇宙で誕生し、原初の太陽系にやってきたのでしょうか?
鉄以下の元素は、通常恒星の核融合によって生み出されています。
炭素(原子番号6)は3つのヘリウム(原子番号2)の核が融合して生み出されます。
この炭素の起源については、現在天文学者の間でも意見が分かれていて、重い星で生成され超新星爆発によって宇宙にばらまかれる、という説と、軽い星で生成され恒星風によって飛ばされてくるという説が存在しています。
この2つの説については、これまで決め手となる証拠は見つかっていませんでした。
しかし、新たな研究は天の川銀河の散開星団に含まれる白色矮星の質量測定から、初期の太陽系に炭素をもたらしたのが、軽い星の恒星風である可能性が高いことを示しています。
これは私たち生命の根本的な起源や、星の進化を探る上でも重要なテーマです。
散開星団の白色矮星に見つかった奇妙な質量のねじれ
銀河の星々は一様に分布しているわけではなく、ところどころに集まって星団を形成しています。
この星団には散開星団と球状星団という2つの種類が存在します。
散開星団は、同じ巨大分子雲から生まれた星の兄弟たちで、同じ様な年齢の数千の星が互いの重力の影響で1カ所に集まっているものです。
こうした散開星団の観測では、星の進化論を利用することで、星団内の星の初期の質量を推定することができます。
合わせて散開星団内の白色矮星の質量を観測すれば、星の誕生時から死亡時までの質量の関係を見ることができるのです。
これを初期-最終質量関係(IFMR:the initial-final mass relation)といいます。
この関係性は、だいたい宇宙のどこを見ても同じで、誕生時の質量が大きい星は、死んで残った白色矮星の質量も大きくなるという直線的な関係が見られています。
今回の研究チームは、2018年ハワイのマウナケア火山頂上にあるケック天文台が観測した、散開星団の中にある白色矮星の初期-最終質量関係を分析しました。
すると、これまで見たことのない奇妙な結果が現れたのです。
誕生時の星の質量を推定した場合、私たちの銀河系に約15億年前に生まれた星は、太陽質量の0.60~0.65倍の白色矮星になると予想されたのに、観測された白色矮星の質量は太陽の0.70~0.75倍というかなり大きい残骸だったのです。
これはきれいな直線を描くはずの初期-最終質量関係の中に、ねじれた波紋が生じているという結果でした。