- ジャイロの力で転倒を防止するバックパック型ロボットが開発される
- 衛星の方向転換に利用されている原理を採用し、歩行者のバランスを強化する
- 高齢者の歩行補助や歩行機能障害患者のリハビリに利用できるかもしれない
転倒は全ての人にとって脅威です。特に高齢者は転倒時に重傷を負うことが多く、入院と死亡に繋がる可能性が高いとされています。
そのため、高齢者やリハビリ中の事故を無くすための転倒防止装置が必要とされています。
オランダのデルフト工科大学生物機械工学科のヘイケ・バレリー教授ら研究チームは、背負うだけで転倒を防止するバックパック型ロボットを開発しました。
衛星に利用されている「コントロール・モーメント・ジャイロ」を採用
バレリー氏らが開発したバックパック型の転倒防止装置には、衛星に利用されている「コントロール・モーメント・ジャイロ(CMG)」が採用されています。
CMGとは、回転コマによって姿勢を制御する装置です。
コマ(円盤)が回転すると、「角運動量」と呼ばれる回転運動の勢い(大きさ)を持つようになります。
そして角運動量は回転軸の方向(ネジが進む方向)を向いており、その向きや大きさの合計が保存されるという性質(角運動量保存の法則)を持っています。
コマの向き(回転軸)を傾けると角運動量が変化するので、保存の法則により、傾けたのと逆方向の力が生じるようになるのです。
つまり、回転コマの向きを意図的に調整することで、任意の方向に力を生じさせることができるのです。
上の画像はCMGを利用した簡易装置です。椅子に装着された車輪は回転しており、角運動量を持っています。レバーで軸を調整することで保存の法則によりトルクが生じるようになります。
これにより、床に足をつけて蹴ったり、外部から力を加えたりしなくても、椅子にトルクが加わり方向を調整できます。
同じように、宇宙に浮かんでいる衛星にも方向転換するためのCMGが採用されています。複数の回転コマを利用すること回転軸を増やし、外部から力を加えることなく様々な方向に転換しているのです。