- 柑橘類を緑化し樹木を枯死させる感染病により、米国のオレンジ生産量が大幅に減少
- オーストラリアに生息するフィンガーライムは感染病にかからない
- フィンガーライムから安全な治療薬を作成することに成功
柑橘類の果実を緑に変色させ、樹木を枯死させる病気「カンキツグリーニング病(huánglóngbìng:通称HLB)」が、現在の米国オレンジ産業に大きな打撃を与えています。
これまで、HLBに対する安全な治療法は見つかっていませんでしたが、最近、米国カルフォルニア大学リバーサイド校の植物分子遺伝学者のハイリン・ジン教授らの研究チームは、HLBに対抗できるペプチドを作成することに成功しました。
この新しいペプチドは、オーストラリアの「フィンガーライム」と呼ばれる果物から作られており、柑橘類樹木に散布・注射することで、HLBを治療できます。
オレンジを緑化する「カンキツグリーニング病」
カンキツグリーニング病(HLB)は、柑橘類の樹木が病原体に感染することで発症します。
HLBに感染した柑橘類には、枝や葉に斑点や変形といった症状が表れます。またその果実は本来黄色やオレンジ色なのですが、一部が緑に変色してしまい、非常に苦くなってしまいます。
さらに、病気が進行すると樹木は徐々に衰弱し、最終的には枯死に至ってしまうのです。
この病気は世界中に広がっており、米国のフロリダにも大きな影響を与えています。例えば、フロリダの2000年オレンジ生産量は約3億箱でしたが、2019年には約7000万箱にまで減少しているとのこと。
その対策方法としてこれまで有力視されていたのは、感染した樹木の伐採です。
また、HLBの病原体がキジラミと呼ばれる昆虫によって運ばれてくるため、農薬を散布することでキジラミを殺す手法も取られてきました。
しかし、この農薬はミツバチに有毒なため、より安全な対処方法が求められてきたのです。