- 脳をシミュレートした計算モデルから睡眠の新たな機能が判明した
- 睡眠は新旧の記憶を再編成して、古い記憶が混ざったり消されたりしないよう更新している
- ゴルフの動きを覚えることで以前学んだテニスの動きが消えないのはこの機能のおかげ
睡眠は健康を保つために重要な役割があり、集中力など脳のパフォーマンスを保つためにも必要であることが証明されています。
しかし、睡眠にはまだまだ私たちの知らない重要な機能があるようです。
カルフォルニア大学サンディエゴ医科大学の研究者は、新たな研究で私たちが生涯を通じて継続的に学ぶためにも睡眠が重要な役割を果たしているという報告を行っています。
睡眠は古い記憶が上書きされて消されたり、新しい記憶によって損傷することがないように更新し続けているというのです。
テニスの動きを学んだ後、今度はゴルフを覚えたとしても、テニスのための身体の使い方を忘れないのはこの機能のおかげだと研究者は話しています。
睡眠による記憶の再編成
わたし達は毎日新しいことを学習し、さまざまな知識を得ていきます。
これらの情報はなぜ新しいものに上書きされたり混同したりしないのでしょうか?
外出するとき、私たちは毎日違う場所の道順を覚えます。最初の信号を右に曲がって、見えてきたコンビニを左に…なんて道順は、なぜ古い記憶と混ざらずに目的地ごとに使い分けることができるのでしょう?
いや、しょっちゅう混同しとるがな! という人もいるかもしれませんが、多くの場合私たちは覚えた内容ごとに記憶を管理できています。
今回の研究チームは、この理由をさまざまな脳の状態をシミュレートした計算モデルによって調査しました。
秘密は睡眠時にありました。
「私たちが眠っているとき、脳は非常に忙しく日中に学んだ内容を繰り返しています。この繰り返し再生は記憶を再編成し、もっとも効率的にそれらを利用できるように整理しているのです」
今回の研究の筆頭著者であるMaksim Bazhenov博士はそう述べています。
古い記憶は記憶したときの状態で放置されているわけではありません。睡眠は毎日記憶を更新しているのです。
睡眠中、私たちの脳は古い記憶と新しい記憶の両方を自然に再生していると考えられます。これが、同じニューロン集団で干渉する複数の記憶の忘却を防ぎ、再度読み出す際のパフォーマンスを向上させているのです。
私たちは毎日、古い記憶と競合する新しい情報を学びます。すべての記憶に対応するためには睡眠が必要なのです。