AIにはまだ存在しない高度な機能
研究者は、この睡眠の持つ記憶の保護と修復の機能は、自動運転技術など人間をはるかに凌駕する性能を持った最先端のコンピューターシステムに欠けている機能かもしれないと示唆しています。
人工知能システムは継続的に学習する機能がなく、新しい情報が学習されると古い知識を忘れてしまいます。
Bazhenov博士は次のように説明しています。
「テニスをするとき、あなたは特定の筋肉の使い方を記憶します。次にゴルフのプレーを学ぶ場合、同じ筋肉を使って別の動かし方を学ぶ必要があります。睡眠は、ゴルフを学ぶことでテニスをする方法が消えないよう、脳内に異なる記憶が共存することを可能にしているのです。
人工知能が新しい学習後の忘却を防いで、継続的に学習できるようにするためには、睡眠のような状態をシステムに追加する必要があるかもしれません」
またこの睡眠が持つ効果を研究して、機能を向上させるような刺激技術が開発できれば、高齢者や学習障害のある人たちの記憶や学習能力を改善できるようになるかもしれないといいます。
「ミネルヴァの梟は黄昏に飛び立つ」という古い格言がありますが、個人の学習でも夜に眠ってはじめて知識は形を得て飛び立つようです。
睡眠を侮って徹夜で勉強をしても、効果は上がらないどころか、ごちゃごちゃになってしまいます。
学習した後は、きっちり睡眠を取りましょう。寝ることで初めて学習内容は私たちの正式な知識になるのです。
新しいアクションゲームをやるとき、古いゲームの操作とごっちゃになってイライラするという問題も、新しい操作を覚えてから一晩きちんと寝れば解決するかもしれませんね。
この研究はカルフォルニア大学サンディエゴ医科大学のMaksim Bazhenov博士を筆頭した研究チームより発表され、生物医学の科学雑誌『eLife』に8月4日付けで掲載されています。
https://elifesciences.org/articles/51005