偽りのないプラシーボ効果実験
今回研究されたのは、予めこれは効果のない偽薬ですということを宣言した上で、プラシーボ効果を確かめる実験です。
それでも効果があるならば、医師はもう患者に嘘を言わなくても良くなります。
研究チームは被験者に苦痛を感じるような画像を40枚程度(うち10枚は普通の画像)を見てもらい、どの程度精神的に苦痛だったかを9段階で評価してもらいました。
被験者は無作為に2つのグループにわけられ、偽りのないプラシーボ班には、プラシーボ効果について解説を行い、次に生理食塩水の無害な点鼻薬を鼻腔にスプレーしてもらいました。
ここで、研究者は被験者に点鼻薬は何の有効成分も含まない偽薬ですが、プラシーボ効果を信用すれば精神的苦痛を和らげる効力があります、と説明しました。
もう1つのグループにも、同じように生理食塩水の点鼻薬を与えますが、こちらは実験の記録を取りやすくするためのものだというだけの説明で済ませました。
この2つのグループにネガティブな画像を見せるとネガティブの段階評価は、偽りのない偽薬グループで低下しました。
この結果では偽物であることを説明した上で偽薬を服用しても、プラシーボ効果があるということが言えそうです。
しかし、重要なのは2つ目の実験です。
1つ目の実験のようなアンケート方式の評価実験では、被験者の経験などから評価に生じる誤差(反応バイアス)が関係している場合もあり必ずしも正確な調査とは言えません。
そこで2つ目の実験では同じ内容を、被験者の脳波を測定しながら行ったのです。
ここでは感情が振幅に影響するとされる後期陽性電位(late positive potential: LPP)がチェックされました。
するとここでも1つ目の実験同様、偽りのない偽薬グループの脳は振幅が有意に減少していたのです。
つまり、プラシーボ効果を理解した上でその効果を信用して偽薬を用いた場合、精神的苦痛が減少しているという事実が客観的な測定値からも確認できたのです。