不自然な角の存在
さらに研究者たちを困惑させているのが、この標本から見つかった不自然な位置にある角の存在です。
そもそも角なんてあるの? と思う人もいるかもしれませんが、鳥類や爬虫類など殻のある卵から生まれる生物は、卵を割るための角「卵歯」と呼ばれるものを赤ちゃんのときに持っています。
そのため、卵歯に当たる突起を恐竜の胎児が持っていること自体に不思議はありません。
奇妙なのはその位置です。現存する爬虫類の卵歯に関する知識から考えた場合、胎児の化石に見つかった突起は卵を割るための正しい位置にないということが示唆されています。
下の画像は解析された頭蓋骨から再現されたティタノサウルスの胎児の画像です。赤い矢印は卵歯として妥当な位置ですが、今回見つかった謎の突起は青い矢印の位置にあります。
こうした角の存在は、成体には見つかっていません。また卵歯は孵化後すぐに抜け落ちてしまうものですが、この突起は骨の構造の中に含まれているため、孵化後もしばらくの間は残り続けただろうと推測されてます。
若い恐竜がなぜこのような突起を持つ必要があったのか、研究者たちは疑問を抱いています。
骨の構造から既存の他の生物たちの胚発生と比較して、この化石は孵化期間の約75%を完了している状態だと考えられますが、それがこの古代の生物にそのまま適用できる知識であるかは不明です。
この化石の胎児が、実際は孵化までのどの期間にあるのかはわからないのです。
また、顔の解剖学的構造や大きさが、これまで見つかっている不完全な竜脚類の胚とは異なっているとも考えられるため、これがまったく新しい種類の恐竜である可能性も排除できません。
実際恐竜の赤ちゃんがどのような姿をしていて、どのように過ごしていたかは、現在のところ謎に包まれたままです。