「あ、いま夢の中にいるーー。」
と思ったことがあれば、あなたは明晰夢の経験者です。
アデレード大学のデンホルム・アスピー博士らの研究チームは「明晰夢をみるため」の最も効果的な方法は、記憶誘導型明晰夢(Memory Induced Lucid Dream, MILD)であると結論づけました。
Reality testing and the mnemonic induction of lucid dreams: Findings from the national Australian lucid dream induction study
https://www.researchgate.net/publication/319855294_Reality_testing_and_the_mnemonic_induction_of_lucid_dreams_Findings_from_the_national_Australian_lucid_dream_induction_study
明晰夢とは、自分で「これは夢だ」といったことを意識しながらみる夢のことです。
人々は昔から明晰夢を体験してきましたが、その実証が初めて行われたのは、1975年になってから。その後も、およそ40もの「明晰夢をみる方法」の研究が行われてきましたが、成功率は3-13%と低いものでした。
しかし、アスピー博士は、それらの研究があまり「当てにならない方法」によって行われていたことに気がつきました。そして、さらに信頼できる方法によって調査を行った結果、MILDという方法の有効性が立証されました。
MILDを実践
MILDは、1970年代にアメリカの精神生理学者ステファン・ラバージによって開発された方法であり、次のステップを踏みます。
1.寝るタイミングの5時間後にアラームをセットする。
2.アラームで目を覚ました後に、直前にみていた夢を思い出す。思い出せなければ、最近見た夢でもよい。
3.心地よいポジションで横たわり、「次に夢をみるときは、それが夢だとわかる」と、静かに心の中で何度も唱えます。ただ言葉をなぞるのでなく、気持ちをこめて唱えることが重要です。
4.3のフレーズを繰り返す際には、2において思い出した夢の中にいる自分を想像します。そして、「夢をみていること」を理解している自分を鮮明に想像します。
5.「3,4のステップ」を眠りにつくまで繰り返します。
研究では、169人のオーストラリア人が対象となり、その半数以上がMILDを実践した週に、少なくとも1度は明晰夢を経験しました。興味深いことに、「ステップ3のフレーズを何度繰り返したか」や「MILD全体を通してかかった時間」は明晰夢の成功と関連はありませんでした。
明晰夢をみるために最も重要であった要因は「すぐに再度の眠りにつく」ことでした。実際に、5分以内に2度目の眠りにつくことができた人はそれ以外の人に比べて、2倍効果的に明晰夢をみることに成功しました。
すこし練習が必要ですが、運がいい人は最初のチャレンジで成功することもあります。そして例え「自分が夢をみている」ことに気がついたとしても、落ち着いてください。激しい感情の変化によって目覚めてしまう可能性があります。
そして、もし夢が不安定になってきたら、夢の中で両手を強くこすり合わせてみてください。奇妙に思えるかもしれませんが、この方法によって脳の中の「夢の感覚」が増し、目覚めにくくすることができます。
興味本位で明晰夢をみるのもいいですが、明晰夢には心理学的な恩恵もあります。たとえば、悪夢をみているときに「これは夢だ」とわかれば、その苦痛を和らげることができます。
練習を重ねれば、現実世界と同じくらい鮮やかに夢の世界を感じることができる明晰夢。
あまりやりすぎると「夢と現実の境界線」を見失ってしまうかもしれないので、実践する方はご注意ください。
via: sciencealert / translated & text by なかしー