サッチャー錯視の例。
サッチャー錯視の例。 / Credit:thatchereffect.com
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逆さにすると顔のパーツを正しく認識できなくなる「サッチャー錯視」の不思議 (2/2)

2020.10.04 Sunday

前ページ顔パーツを正しく認識できない「サッチャー錯視」

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脳は顔の認識と、表情や個体認識を別々に行っている

不可思議なサッチャー錯視の原因については、2014年9月10日に科学雑誌『Journal of Neuroscience』に掲載された産総研の論文で説明されています。

顔の認識はの側頭葉視覚連合野で行われています。そこではまず、見たものがヒトの顔なのか、あるいはサルや図形による顔なのかということを判断します。

そしてこうした顔認識の神経活動から少し遅れて、脳は個体識別や表情などの分類情報を処理しているのです。

ここで個体や表情の情報処理が遅れる理由は、顔パーツの組み合わせで判断するため処理に時間がかかるからだと考えられます。

そして、この神経活動を顔画像が正立の場合と、倒立の場合で調査したところ、倒立画像では、顔認識の活動は変わらなかったのに、顔パーツの認識では活動が大幅に減少していたのです。

正立の顔と倒立の顔に対して脳が処理する情報。
正立の顔と倒立の顔に対して脳が処理する情報。 / Credit:産総研

つまり、見たものが顔なのかという判断と、それが誰でどういう表情なのかというパーツ識別の判断は、脳で別々に処理されていたのです。

そして顔の判断は正立、倒立関係なく機能しますが、顔パーツに関する判断は、画像が逆さになるとほとんど機能しなくなってしまうのです。

これがサッチャー錯視の起きる原因です。

このため、もし宇宙空間など無重力の環境で、逆さまの人と対面で会話すると、その人の表情や、それが誰なのかを認識する能力は大きく低下してしまう可能性があります。

私たちは脳の活動を自分で意識してはいませんが、その複雑な処理方法はサッチャー錯視のようなヘンテコ画像を見ることで明らかにできるのです。

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