今回の研究を発表したディアス研究室の液体窒素で冷却された超伝導体の上に磁石が浮かんでいる様子の写真。これまではこの写真のように超電導には超低温環境が必要だった。
今回の研究を発表したディアス研究室の液体窒素で冷却された超伝導体の上に磁石が浮かんでいる様子の写真。これまではこの写真のように超電導には超低温環境が必要だった。 / Credit:University of Rochester photo / J. Adam Fenster
chemistry

ついに初めて”室温での超電導”を達成! 世の中を一変させるまであと一歩

2020.10.15 Thursday

電気抵抗が0になり、磁場を弾く不思議な現象「超伝導」は絶対零度に近い極寒の環境でなければ実現できないものでした。

もしこれが日常の環境で実現できるようになれば、世の中は一変すると言われています。

超電導を室温に近い環境で実現する研究は進歩を遂げていて、これまでで超電導を実現した最高温度は-23℃です。これも大躍進と言える成果でしたが、10月14日に科学誌『nature』で発表された最新の研究は、とうとう完全な室温15℃で超電導を実現したと報告しています

しかし、これは超高圧という環境と引き換えに実現された成果でもあるんです。

University of Rochester https://www.rochester.edu/newscenter/rochester-sets-new-record-for-room-temperature-superconductor-455722/ , sciencealert https://www.sciencealert.com/for-the-first-time-superconductivity-has-been-achieved-at-room-temperature

ついに実現された室温15℃での超電導

ダイヤモンドアンビルセルの仕組み。
ダイヤモンドアンビルセルの仕組み。 / Credit:Dias lab,University of Rochester

室温超電導を実現するために今回の研究で使用されたのは、高圧力をかけられる装置「ダイヤモンドアンビルセル」です。

これは2つのダイヤモンドが向い合せで設置されている装置で、ダイヤモンドで挟んだ底面に高い圧力がかかります。

実験ではここに水素と炭素、そして硫黄を組み合わせた試料をセットして「炭素質硫黄水素化物」を合成しました

これが室温での超電導を実現させた物質なのです。

超電導は量子力学的な現象で、電子が最低エネルギー状態に近づいたときに発生します。この状態は絶対零度近くで起きるため、基本的には極低温の状態で見られる現象として知られています。

しかし、同様の現象は軽い元素の結晶では比較的高い温度で起きやすいと考えられているのです。この世のでもっとも軽い元素は水素なので、水素の結晶を使えば高温でも超電導が起こせるのです。

問題は、軽い水素を結晶化させることが難しいということです。水素を固体にするためにはとてつもない高圧をかける必要があります

高圧をかける装置ダイヤモンドアンビルセルは水素を結晶化させるために使用されたのです。

なお、この装置で生成できる超電導材料の量は非常に小さなピコリットルサイズ(1リットルの1兆分の1)のものです。

次ページ鍵を握るのは水素の化合物

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