太さの違う”2種類の糸”が使われていた
巣に使われる糸の性質は、オーストラリア原子力科学技術機関(ANSTO)の協力のもと調査されています。
その結果、カゴ型の巣は、マイクロファイバー(8マイクロメートル以下)とサブミクロンファイバー(サブミクロン=1万分の1ミリ)の2種類の糸が組み合わされていました。
さらに、2種の糸は化学的な成分が異なっており、それぞれが糸の高い弾力と剛性を生み出し、それによって高い強度を持つクモの巣が実現していました。
同チームのトーマス・シャイベル教授(ドイツ・バイロイト大学)は「2種の素材の組み合わせという点で、工業的に作られる複合材料に近い」と指摘します。
これに加えて、糸には水をはじく撥水効果とエサの虫を誘引する化学物質の存在も示唆されました。
また、糸自体は、多くの種類のクモが卵を保護する際に使う糸に似ていることから、エルガー教授は「エサ捕獲用の巣は、卵を保護するために糸を出す習性から進化した可能性がある」と推測します。
このクモ糸は、巣の進化史の理解を深めると同時に、工業的な新材料の開発の点でも大いに期待が寄せられています。