恐怖に快楽で立ち向かう
理由として考えられるのは、人間は、私たちがヒトになった後も、かなり長い間、食べられる側の存在だったからです。
大型の肉食獣に噛みつかれて、痛みだけを感じてうずくまっていては、そのまま食べられてしまいます。
肉食獣から受ける痛みや恐怖に対して快感が同時に働けば、一種の打ち消し合いが生じ、高度に発達した脳から冷静な判断を引き出せるのです。
ですがお化け屋敷の場合は、より状況が複雑になります。
私たちの小脳扁桃は作り物のお化けに対しても恐怖と快楽を発生させますが、私たちの巨大な大脳は「お化け屋敷」に危険がないことを後から思い出させてくれます。
すると、小脳扁桃から送られてくる瞬間的な恐怖と快感のうち、恐怖が先に消え去り、快感だけが余韻として残るのです。
お化け屋敷はヒトの脳機能の複雑な絡み合いで、楽しさを生みだしているようです。