プラセボ効果だけではダメなのか?
プラセボ(偽薬)効果とは、特に効果のない薬を与えることで本人が良くなったような気になる現象をいいます。
これは不要な薬の処方を避け患者の心理を安定させるために、医療の現場でも実際に利用されている治療法です。
だとしたら、健康に対する不安を払拭してくれるマルチビタミンは十分意味のある薬なのではないでしょうか?
しかし、医学は古来から続くまじないじみた意味のない治療の中から、確実に効果のある治療を選別することで発展してきたのです。
ほんの数百年前まで、医学の現場では瀉血(しゃけつ)という身体の血を抜く何の意味もない治療が平然と行われていました。
アメリカ初代大統領のジョージ・ワシントンはこの無意味な治療が原因で失血死したとも言われています。
プラセボ効果は、医療のレベルとしては祈祷師が病魔を払うおまじないをして患者が楽になったと言っている時代とやっていることが変わらないとも言えます。
そのため、医療の効果を研究する研究者たちは、その治療に本当に意味があるかどうか、つまりはプラセボ効果以上の効果がきちんと確認できるかどうかを必死で検証し、医療のレベルを下げないための努力をしているのです。
現代ではきちんと研究すれば、プラセボ効果以上のまともな効果が提示できる健康対策はいくらでも提案することが可能でしょう。
研究では、必要栄養素とミネラルを得るための最良の方法は、食品を介して摂ることであり、マルチビタミンがその代用になるという科学的な根拠は示せないと主張しています。
アトランタのエモリー大学病院の栄養士マジュムダー氏は、「ビタミンやミネラルは単独では機能しないことが分かっており、それらは食品の中で相乗的に働いています。これら栄養素を食品から独立させた場合、同じ効果を得ることはできません」と語っています。