焼き立てパンの香ばしい香り。
焼き立てパンの香ばしい香り。 / Credit:pixabay
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匂いが記憶を呼び覚ます「プルースト効果」とは? 香りは人生を豊かにしてくれる (3/3)

2020.12.19 Saturday

前ページ匂いと脳の関係

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商品戦略からメンタルヘルスまで 匂いの持つ効果

匂いというものが、人の記憶や感情と結びついているという研究成果は、現在ではさまざまな場面で有効に利用されています。

企業は統計調査から効果的な匂いを探り出し、それを商標登録しています。

これは「匂い商標」として知られています。

例えば、1990年代、あるテニス会社がテニスボールに草の匂いを添加して、これを匂い商標として登録しました。

消費者がテニスボールのバックを開けると、芝生で遊んだ感覚や記憶が蘇り、商品に良い印象を抱くのです。

イチゴのフレーバーを使った商品がやたらと多いのも、こうした戦略に関連しているかもしれません。

イチゴは多くの場合、誕生日ケーキやクリスマスケーキなどに大量に使われています。イチゴの匂いは、そうした記念日の幸せな記憶と結びついている可能性が高いのです。

誕生日の思い出はいちごの匂いと一緒に記憶されているかもしれない。
誕生日の思い出はいちごの匂いと一緒に記憶されているかもしれない。 / Credit:canva

アロマテラピーは匂いを使ってメンタルヘルスを改善する療法です。

ここでも香りの効果は、ポジティブな感情や気分との結びつきが重要になってきます。

精油の香りを嗅いで、臭いだけで全然リラックスできない、と思った人は、その匂いに楽しい感情や気分が結びついていなかっただけかもしれません。

このように匂いを使った商品や、療法は記憶や経験に依存するため、一部の文化圏でしか通用しない場合もあります。

ラベンダーの香りがリラックスできる理由の一旦は、おばあちゃんが家庭菜園で育ててたとか、持ち物の香り付けに使っていたという記憶が、暖かな思い出と結びついているためです。

なのでウチのおばあちゃんちは、ぬか漬けの香りしかしなかった、という人はラベンダーよりぬか漬けの香りのほうがリラックスできるかもしれません。

ほっと癒やされる心の和む料理としてよく紹介されるコンフォートフードも、家庭料理を連想させることが重要で、その効果の一部はやはり匂いにあります。

そのため、うちのお母さんは子供の頃こんな料理しなかった、という人にとっては、コンフォートフードもさして癒やされる料理ではなくなってしまう可能性が高くなります。

コンフォートフードの一例。日本人に馴染みのない香辛料や食材を使ったら、癒やしの料理もただの海外料理になってしまうかもしれない。
コンフォートフードの一例。日本人に馴染みのない香辛料や食材を使ったら、癒やしの料理もただの海外料理になってしまうかもしれない。 / Credit:canva

自分の癒やされる匂いを把握しておくことは、ストレスを解消しリラックスするコツになるかも知れません。

嗅覚のネットワークは、嗅げば嗅ぐほど新しい接続を生成して強化されて行きます。

世の中では、あまりクンクン匂いを嗅いでいると変態ぽいと言われてしまうかもしれませんが、ぜひ自分の人生を豊かにするために、積極的にクンクン匂いを嗅いでいきましょう。

そして素敵な思い出と匂いを結びつけていってください。

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