大きな課題を解決するための道具「社会性・言語機能・文化」
これまでに紹介した道具はすべて自己完結するものでした。しかし、知能には他者との関係によって課題を解決する能力もあります。
一般にそれは社会性と言われています。課題を解決するために仕事を分担したり、協力したりするのです。
例えば、人々が集まり、道具を作るチーム、木の実を道具で取るチーム、木の実を保存し分配するチームに分かれることで、より効率的に課題を達成できるでしょう。
そしてこれを可能にしているのが言語機能であり、知能に含まれます。
さらに人間は社会性や言語機能を利用して、非常に強力な道具を生み出しています。それが「文化」です。
一人の人間だけでも、また一世代のグループだけでもロケットや量子加速器を作ることはできません。
しかし世代を超えて知識を共有する能力のおかげで、個人レベルでは解決できない課題を成し遂げているのです。
「社会性は、厳密には知能とは異なる」という意見も多いようですが、知能を「課題解決のメカニズム」とするなら、社会性もまたその1つだとみなせるでしょう。
さて、「知能とは何か」を道具箱に例えて解説しました。
その道具箱には複数の道具が含まれていますが、それぞれの能力には個体差があります。
この点を知っておくなら得意分野や苦手分野を理解できるでしょう。天才が常人に理解できない発想を持っているのは「創造」に長けているからだと分かります。
また知的障害者が「なぜできないのか」理解し、どのような分野で助けを必要としているかも把握できるでしょう。
いずれにしても、私たちは強力な道具箱である知能をもっており、それらを今後も有効活用してくべきなのです。