丸型は「遊走子」が少ないため?
幸運にも、マリモの3つの形態はすべて阿寒湖に存在します。
そこで研究チームは、2017〜18年の5月〜10月にかけて、湖内の5ヶ所で浮遊型・固着型・凝集型のマリモを採集しました。
その後、それぞれの形態ごとに繊維(糸状体)を50本取り出し、そこに含まれる遊走子を数えています。
結果、4本の鞭毛を持つ遊走子が、8月中旬〜9月上旬にかけて、凝集型と固着型でのみ産生されることが初確認されました。
一方で、遊走子の産生レベルはとても低く、とくに凝集型ではそれが顕著でした。
また、浮遊型には遊走子が見つかっていません。

マリモは、培養条件下でまれに2本の鞭毛を持つ遊走子をつくることが知られています。しかし、自然下で4本の鞭毛を持つ遊走子が(低レベルではあるものの)、夏季に規則的に産生されるのは初の事実です。
遊走子の産生はマリモの集合体をほどく性質があるため、遊走子の少なさが丸型の維持にかかわっていると見られます。
もちろん、マリモが丸くなる原因には、波の力や湖底の地形、そこを転がる動きなど、環境因子も重要です。
同チームは「遊走子はマリモの形成プロセスを理解する上で大きな糸口となる」とした上で、「ライフサイクルにおける遊走子の役割を理解することで、マリモの保護につなげていきたい」と述べています。