“鳴き声格差”はどこから?

猫が喉を鳴らす“ゴロゴロ音”は、母猫を安心させる子猫の信号にもなり、大人どうしでは「私は敵じゃないよ」という和解のサインにも使われる多機能ツールだと言われています。
それだけに「なぜ個体ごとに“おしゃべり度”が違うのか」は長年のナゾで、ネコ好きなら一度は語り合うテーマでした。
イエネコ(Felis catus)は約1万年前、穀物備蓄を荒らすネズミ退治の“副産物”として人と暮らし始め、犬とは逆に「自分から寄ってきた」珍しい家畜化の歴史を持ちます。
これまでの研究によって、行動を決めるのは環境だけでなく遺伝でもあることがわかっています。
たとえば犬では報酬系遺伝子DRD4が「人懐こさ」に関係し、馬やラクダでもアンドロゲン受容体(AR)の長さが気性を左右することが報告済みです。
しかし猫に関しては、オキシトシン受容体などわずか数遺伝子しか手が付けられておらず、アンドロゲン受容体と行動のリンクはこれまで完全な“空白地帯”でした。
アンドロゲン受容体遺伝子はX染色体に乗り、特定の反復(CAG:グルタミン)が「短いと高感度/長い=低感度」になりやすいとヒトやイヌで知られています。
京都大学のチームは「もし猫でも同じ仕組みが働いていれば、ゴロゴロや鳴き声の謎が解けるはずだ」と発想し、大規模調査を計画しました。