なぜ子オオカミは独りで死んだのか?
しかし、気になるのは「なぜ子どものオオカミがたった1匹で死んでいたのか」ということです。
永久凍土で動物がミイラ化するには、いくつかの条件をクリアしなければなりません。
1つは、地面が常に凍っている場所で死ぬこと。もう1つは、死後すぐに凍土の中に埋められることです。
少なくともこの2点をクリアしないと、遺骸が腐ったり、他の動物のエサとなって消えてしまいます。
調査の結果、子オオカミの死因が餓死ではなかったことから、研究チームは「巣穴が崩れたことで圧死したのではないか」と推測しました。
おそらく、親兄弟が狩りに出かけている間に、留守番をしていた子オオカミは巣に押しつぶされて、そのまま気密性の高い環境の中で保存されたのでしょう。
そうすれば、独りでいたことや、保存状態が完璧である理由の説明がつきます。
近年は温暖化の影響で永久凍土が急速に融けており、大昔の動物のミイラが次々と出土しています。
古生物学者にとっては嬉しい悲鳴ですが、出土したミイラはすぐに腐食が始まるので急を要する問題でもあります。
こうしている間にも、どこかで動物のミイラが地上に顔を出しているかもしれません。