DNA分析から「祖先の起源」も判明
オオカミのミイラが見つかったのは2016年7月のことで、場所はユーコン準州にあるクロンダイク金鉱地です。
ミイラは、柔らかな筋組織から体毛、皮膚、鼻、歯まで、ほぼすべてが完全な状態で残っています。
デモイン大学(アメリカ)の調査により、オオカミは生後7週間のメスで、生息年代は5万7000年前と特定されました。
母系遺伝のミトコンドリアDNAを解析してみると、子オオカミには、かつてのユーコンやアラスカに分布した「ベーリンジアン・オオカミ」と、ロシアに分布した「ハイイロオオカミ」の両方との類似性が見つかっています。
これは氷河時代にロシアと北米をつないでいたベーリング海峡を架け橋に、双方のオオカミが混交した証拠と言えるでしょう。
また、骨の分析から、子オオカミが短い生涯の中で食べていたエサも判明しました。
それによると、川に生息したチヌックサーモンや水鳥のような水生生物を食べていたようです。
子オオカミが生きた時代は、氷河が少し後退しはじめた間氷期にあたり、水辺での狩りも可能でした。
氷河期には陸上でバイソンやジャコウウシを狩っていたと思われますが、オオカミは季節によって水生のエサに切り替えることが知られています。