コロナ加熱問題とナノフレア
コロナというのは、太陽表面から2000kmほど上空にある太陽の大気層です。
このコロナと呼ばれるガスは100万度を超える高温であることがわかっています。しかし、一方で太陽の表面は約6000度です。
普通に考えて太陽のような燃え盛る火の玉は、表面がもっとも熱く離れていくほど冷えていく印象があります。
なのに上空へ行くほど温度が急激に上昇し、100万度以上も熱くなるというのはなぜなのでしょうか?
これがコロナ加熱問題と呼ばれるもので、太陽最大の謎だとも言われています。
これには、まったくアイデアがないわけではありません。コロナ加熱問題については、いくつかそれを説明する説が提案されています。
有名なのは1970年代に米国の宇宙物理学者ユージン・パーカーが提案した「ナノフレア」と呼ばれる現象です。
通常科学者が観測している巨大なフレアとは異なり、太陽には観測では確認できないような非常に小規模のフレアが、秒間100万回を超える勢いで発生しており、それがコロナを加熱させているというのです。
以来、半世紀近くに渡って科学者たちは、このナノフレアがどのように見えるのかを解明しようとしてきました。
ナノフレアは、観測できないほど小さいと言っても約100億トンのTNTに相当する爆発を引き起こします。
これが周囲の粒子にエネルギーを与えて加速させ、そのエネルギーが何千キロも離れたコロナへ渡されて加熱していると考えられるのです。
しかし、技術が進歩してもナノフレアを目で見ることはほぼ不可能だと考えられています。
なので、このナノフレアの存在を明らかにするためには、その兆候を示す証拠を集めることが重要になります。
2017年には、通常サイズのフレアがまったく起きていない領域で、非常に太陽の活動領域が加熱していることが観測されました。
これは明らかに、目では見えない何かが起きていることを示しています。
今回の研究は、そんな太陽の観測において、NASAの運用する太陽観測衛星「IRIS(アイリス)」の画像を分析し、ナノフレアを説明する新しい発見をしたと報告しているのです。