ピクサーの社長も持っていた症状!心の目が見えない「アファンタジア」
あまり聞き慣れない言葉ですが、世の中には「アファンタジア」と呼ばれる、頭に視覚的イメージを描けない人たちがいます。
聞き慣れないのも当然で、この「アファンタジア」という名前は2015年にエクセター大学のアダム・ゼーマン教授の研究で名付けられたものです。
1880年に最初の報告があったとされていますが、最近までほとんど研究されることのなかった症状なのです。
この症状は外傷によって後から獲得される場合もあるそうですが、多くは先天性(生まれつき)のものだといいます。
この症状を示す分かりやすい例が、アファンタジアの人は寝るときに羊を数えるという意味が理解できないというものです。
彼らはそれが単なる表現だと思っていて、大人になるまで、他の人には実際にイメージの中で羊を視覚化できて本当に数えていると気づいていなかったというのです。
頭の中に視覚イメージが作れないということがどういうものなのか、普通の人には逆にイメージすることが難しいですが、意外とこの症状を持つ人は多いと言われています。
研究では、アファンタジアの人は50人に1人存在すると言われていて、世界最高のアニメスタジオの1つピクサーの社長エドウィン・キャットマル氏も、自身がアファンタジアであることを公言しています。
彼はチベットの瞑想を試そうとしたときに、自分が他の人と脳が違っていると気づいたのだそうです。
このことを機に、エドはスタジオ内で聞き取りをしてみました。するとピクサーのアニメーターの中にもアファンタジアの人が存在したのだそうです。
視覚的イメージが何より重要と考えられるアニメーターの仕事に、アファンタジアの人がいるというのは意外な感じがします。
アファンタジアは、まだ本格的な研究が始まって間もないため、これが本当にアファンタジアに該当しているのか似たような別の症例なのかはわかりません。
しかし現状の認識では、アファンタジアは想像力の妨げにはならないと考えられています。
確かに、数学者や物理学者は視覚的なイメージを作ることが不可能な高次元の領域について考え、数式で記述しています。これは並外れた想像力がなければできないことです。
けれど、思い出の風景などについてはどうなっているのでしょうか?
大人になると実家から離れて暮らす人も多いでしょうが、ほとんどの人は地元の風景、実家の居間などを視覚イメージとして頭に思い浮かべることができます。
今回報告された研究は、そうした記憶の風景を、アファンタジアの人たちがどのように頭の中で扱っているか調査を行ったのです。